NOVEL


□幻想NIGHT
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「おい忍足、」



部活が終わり、ガヤガヤと
騒がしい部室で着替えていると
跡部に声をかけられた。



「ん?なに?」



パッと振り向き、
すぐに返事を返す。



「今日時間あるか?」

「え、」



突然の質問にびっくりしたが、
特に何もないよなーと思い
そう伝える。

すると跡部は



「着替え終わったら荷物持って
正門で待ってろ」



と言ったあと、部室から
出ていてしまった。





≫≫≫≫≫≫≫≫≫ ≫ ≫ ≫





「んー…なんやろ、跡部のやつ…」



着替えが終わり、荷物を持って
かれこれ10分ほど跡部を待っている。
辺りに生徒は見当たらない。



「んー…なんやろ…」

「侑士」

「あ」



もう一度呟いたあとすぐに
跡部の声が聞こえた。



「あと「侑士。二人きりの時は
名前で呼べって」……ぁ」

「景吾、どこ行くん?これ…」



あぁ、そうやった……と思い
言われた通り言い直してから、
質問する。

跡部の登場とともに目の前に
現れた黒塗りの立派な車に乗せられて、
今どこかに向かっている。



「俺の家だ」

「ああ……」



まぁそこは薄々気付いていた。
初めてやないしな…。
それより何のために…?




「着いたぞ、ほら侑士。
早く降りろよ」

「あぁ、うん…」



時刻はだいたい9時前だろうか。
辺りはすでに真っ暗で……。



「今日は真っ暗なんやね」



忍足がそう言うのも
当たり前だった。
いつもの跡部邸といえば
夜遅くまでキラキラ光って、
光の少ない時でも門の灯りや
庭の灯りがやわらかい光を
放っているものだ。

だか今日は本当に真っ暗。
豪邸は辺りの闇に溶け込んでいるようだ。



「なんでこんな真っ暗なん?」

「お前に見せたいものがあるからな」



跡部は忍足の手を取り、
広い庭に案内する。
庭の中央まで歩いてくると
跡部は少し忍足から離れ、右に出る。
そしとくるっと忍足の方を向き、
右腕を高く挙げた。



「景吾?」

「侑士、ちゃんと見てろよ…」



パチーーーン………



跡部の指先から放たれた
鋭い音は、暗闇に大きく響き渡った。







「…っ!!」
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