NOVEL


□いじわる
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「好きです、付き合って下さいっ…」


日の当たらない校舎裏。
一人の女子生徒が頬を赤らめる。

対する男子生徒は…



「すまんのぅ。無理じゃ」



付き合う気など
さらさらないらしい。
少し冷たい風が吹き、沈黙が続く。



「すまんが「…あの!
だったらっ」…………何じゃ…」



終わりを切り出そうとしたが、
失敗に終わる。

大きくため息をつき
次の言葉を待つが、
女子生徒は下を向いたままだ。



「何じゃ…」



発言を促すと、女子生徒は
顔を上げ、とんでもないことを
言い出した。



"キスして下さいっ"



「はぁ?」




馬鹿馬鹿しいお願いに、
明らかな不満を声に出した。



「あたしっ…離しませんから…
キスしてくれるまで…!」

「………………ぅーん…」


シャツの端を掴まれ、
逃げられない。



最悪なパターンじゃ。
どうしたもんかの…。


沈黙が再び空間を支配する。


……パキ……ッ…

空間を裂くのは
木の枝が折れたような……
高く、細い音。


そして………



「キス」



まるでその音が
合図だったかのように、
仁王は言葉を発する。



「しようかの…」

「ぇ、本当…ですか…?」



女子生徒は予想外だったのか
目を大きく開いている。



「ああ、ほら早く」

「………っ///」






見えたのは
イタズラ心の微笑で……。




地面をテンポよく蹴る音が
風を伝わって聞こえた。








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「まったくもう………」



テニスウェアに着替えた柳生は
仁王を探していた。


練習がもう始まるというのに
仁王君が居ない。
部活前にふらっと居なくなることは
しょっちゅうだ。

いつもは部活に来るのを
待つだけなのだが今日は……




「今日は一日
ダブルスの練習をすると
言ったはずですが…」





…という訳で仁王を探している。
ブツブツ言いながらも
動く足は軽く感じる。

恋人を探すという行為に
何かドキドキしている
自分を意識して柳生は少し
恥ずかしくなった。




「はぁ…
いったい何処にいるんですか…」


いくら探しても見つからない。
もしかしたらテニスコートに
居るかも知れない。
一旦コートに戻ってみようと思い、
少し考える。




(ここからだと……
校舎裏を通った方が早いですかね…)



確信は無かったが、柳生は
自分の思ったまま校舎裏を
通ることにした。
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