泣く子もだまる親衛隊

□泣く子もいやがる
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一日目。
おれは隊長さまの命令にしたがって、平井新を見守っていた。
本人とは絶対に接触しないように、細心の注意を払いながら、柱の影とか、人を盾にして隠れた。はたから見たら、ずいぶん怪しいやつだったに違いない。
でも、その分、平井新がどんなやつか、いい情報を得られた。

会長さまの恋人、平井新は噂どおりの地味な男だった。
眼鏡と、もっさもさの髪型が平井新の印象を暗くしている。
性格的には明るいらしい。まわりのやつらには生意気な口調で話しかけて、逃げられた場面を見てしまった。

こいつ今日一日で、どれだけのやつに「きもい」「うるさい」と言われたんだ。

平井新を好意的に見ているやつなんて、会長さま以外にいない。
今日一日でよーくわかった。

放課後になると帰宅部の平井新は、一人で教室を出てきた。
一緒に帰る友達もいないのか。至極当たり前だなぁと思う。
平井新が向かった下駄箱は、すでに清掃を終えてある。おれだけで、ごみの類を処理するのはかなり骨が折れた。
今朝は机を守るためにかなり早い時間に登校した。これも隊長さまのため。
おれはあくびを一つしながら平井新の後を追った。

「おい」

辺りにはもうだれもいない。細い廊下におれと平井新の二人きり。

急に後ろを振り向いた平井新は、眼鏡の奥でおれをにらんだ(ように見えた)。
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