泣く子もだまる親衛隊
□賢い子もグレる
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一日目のはじまりは、いやに静かなものでした。
気持ち悪いほどに過激派はおとなしく、会長さまへのお弁当攻撃もお声かけも、黄色い声ですらも、何だか下火でした。
それが逆に恐ろしく感じるのですが、きっと、ぼくたち穏健派の出方をうかがっているのでしょう。
あちらも親衛隊解散で相当なダメージを受けているのだと思います。
少しお気の毒さまです。
緊張してばかりだった一日目も無事に終わりそうです。
いくつかの書類を片付け、会議室を出ますと、窓にはどんよりと垂れ下がった灰色の雲が映りました。
一雨来そうですね。
廊下を行けば、部活動にはげむ方たちの声が聞こえてきます。
今日も司書さんとお話できたらなぁと考えていましたら、前からだれかやってきました。
真っ赤な髪をした男の子が、さもだるそうに歩いてくるのです。
小柄な体格ですが着くずした制服は、不良という言葉がふさわしいです。目付きはどんな正義も許さないごとく、するどく光っています。
最近は治ってきたはずの恐怖体質が一気にぶりかえしてきて、ぼくは足元が縫い付けられたように動けなくなりました。
それが廊下の真ん中で立ち尽くしていたので、不良さんはぼくに気付くなり、
「どけよ」
なんて律儀に凄んでくださったのでした。