泣く子もだまる親衛隊
□賢い子も間違う
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ようやく浮上しかけた心も、隊長さまの言葉を受けて、地下深くに落ちていくようでした。
三日目最後の日、ぼくの体は、親衛隊会議室にありました。
「会長さまの恋人はぼくなんだ」
親衛隊がなくなるだけでもつらいことでしたが、隊長さまはたたみかけるように告げました。
親衛隊のみなさんもぼくと同じかもしれません。
隊長さまの言葉が本当なら、ぼくたちはだまされたことになるのですから。
「ぼくらをだましていたんですか!」
「隊長さまには失望しました!」
「最低」
みなさん、口々に罵声を浴びせます。
「みんなのお怒りはもっともだと思う。でもそういうことだから。親衛隊は解散!」
早口でまくしたてた隊長さまは会議室を出ていきます。穏健派だったみなさんも、怒りを押さえられないようで詰め寄りますが、それを止めた人がいました。
隊員の一人です。
「おれたちは穏健派でしょう。暴力はよくない」
彼がかばっている間に、隊長さまは出ていかれました。ぼくはどうしても聞きたいことがあって、人の壁をかいくぐり、会議室を飛び出しました。
まだ廊下を歩き続けている隊長さまのお姿。
「隊長さま!」
「副隊長の藤沢くん、か」
隊長さまは足を止めて振り向いてくださいました。そのお顔には何の変化もなくいつもどおりで、むしろ不自然でもありました。
「一つお聞きしてもよろしいですか?」
「うん、いいよ」
軽い感じでおっしゃいました。
「隊長さまはなぜこんなことをなさったのですか?」