泣く子もだまる親衛隊
□泣く子もおわる
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生徒会会長親衛隊副隊長であるおれは、新しく入った隊員たちへと向き直った。
外は雪の散った寒い日だというのに、親衛隊の面々はマフラーも手袋もしてはいけない。
これも親衛隊の通るべき試練。
教えるおれも、同じ条件で、寒空の下、声を張り上げなくてはならない。
新人隊員の多くはガヤからはじめる。
「それじゃあ、はじめるか」
パンと手を叩くと、隊員たちは黄色い声を一斉に上げた。
耳をつんざくような声だが、まだ足りない。
「もっと、大きく! 今度は小さく! 声を落として!」
ガヤといっても、いつもギャアギャア言えばいいってもんじゃない。周りの空気も考えて、迷惑にならないようにしなくてはならない。
結構、技術が必要なものなんだ。
「なあ、聞いてんのかよ」
邪魔が入った。せっかく気づかないふりをしていたのに、しつこくて我慢ならない。
「うるせえな! こっちは忙しいんだよ」
振り向きざまに叫んでやった。まあ、そんなことをしてもまったく効果はなくて、もさもさ頭は「やっと、振り向いた」と喜ぶだけだ。
平井新はあいかわらず平井新のまま、人の嫌悪感なんて何のそので、そこに存在している。
眼鏡の奥がきらりと光った気がした。
「なあ、高山光貴とたいら、あれからどうなったんだ?」
どうなったも何も、二人の間に目立った変化はない。親衛隊や会長さまの恋人の護衛という接点をなくして、近づくことなんてできない。
「何にもねえよ」
自分で言っていて悲しくなる。