泣く子もだまる親衛隊
□泣く子もわらう
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「好きだ」
顔も知らない。話したこともないやつに言い寄られる気持ちがわかってたまるか。
「好きなんだ」
強引に腕を捕まれ、何度も告白をされる。それがどんだけ、おれをムカつかせるか知らないで、やつは思いをぶつけてくる。
「いきなり付き合うのがあれなら、ともだちからでも……」
もうたえられん。
「ふざけんな」
低くうなるように言ってやると、男の顔が傷ついたように歪んだ。
「おれは男なんて好きじゃない。好きなのは女だ。離せよ、気持ち悪い」
本当の気持ちをぶちまけてやると、やつは泣きそうな顔をする。
腕を振れば、さっきまで強い力を保っていたやつの手を、簡単に払うことができた。
「おれの前に二度と顔見せんな」
少しは悪い顔ができただろうか。嫌いだと表に出せたなら狙いどおり。
「わかった。ごめんな」
男は勝手に謝って、背中を見せて行ってしまった。
ちょっと言い過ぎたかもなと、気にするのはおれの癖。
変に期待させるようなことは言いたくない。ぜったい男を好きになれないのに、友達からなんて無理だ。あいつは友達を望んでいない。気持ちを知ったからこそ、そんな残酷なことをおれにはできない。
「きみ、いいやつだね」
後ろからいきなり、声をかけられてびびった。肩がぴっくって上がったのが少し情けない。