泣く子もだまる親衛隊
□泣く子もあばれる
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嫌なこともあったけど、高山さまとお近づきになれたかなぁと喜ぶことにした翌日。
今日も高山さまをお守りするため廊下を歩く。
というか高山さまは会長さまの部屋にいて、大丈夫なんだろうか。襲われちゃったりしない?
案外会長さまには新にはない常識がありそうだが、高山さまと二人きりになったら理性もなくなるだろう。
顔も姿もきれいだし、何より白くてやわらかい肌は同じ男としてもやばい。もしおれがとなりにいたら。
くそ、会長さまめ。うらやましすぎる。
廊下の真ん中で頭を抱えていたら、ぽんと肩に手を置かれた。
「松田くん、大丈夫?」
「あ、大丈夫です」と抱えるのをやめて後ろを振り向くと、「前野さま」が人の良さそうな目でおれを見ていた。
背も高くすらっとしている前野さまは見下ろして笑った。
彼は元会長さま親衛隊の幹部であって、穏健派一の穏健派。過激派も彼には頭が上がらないらしい。ある意味、隊長さまに次ぐ実力者だった。
「前野さま、こんなところでどうしたんですか?」
生徒会メンバーの部屋に続く廊下は誤解のタネになるから、あまり一般生徒は近づかない。前野さまも親衛隊をやめたし、一般生徒になったから用はないはずだ。
「いやね、会計さまと書記さまに呼び出されてね」
前野さまは苦笑しながらでかい封筒を「これ」と見せてきた。
「たまに生徒会の仕事を手伝っているんだ」
「そうだったんですか」
知らなかった。あー、知らなかった。生徒会のメンバーが忙しそうにしていないのは他に手伝わせているからなんだ。
「でも、結構いい仕事だよ。食堂の食べ放題の券がもらえるから」
「えー、本当ですか! いいなあ」
「ふふふ、今度きみにも手伝ってもらうね。そしたら一緒に券を使おう」
「はい、ぜひ!」
前野さまは会計さまの部屋に入っていき、おれは会長さまの部屋の前でノックをする。
そんなに待たずに高山さまが現われて、あいさつをする暇もなく「入って」とおれを部屋の奥に招き入れた。