泣く子もだまる親衛隊
□泣く子もあばれる
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今日も会長さまの部屋の前で、高山さまを待つはずだった。
なのに、おれという男は、あつかましくも会長さまの部屋に入り、ソファにまで腰を落ち着かせている。
まさか高山さまと向かい合って、紅茶をすする日が来るとは思わなかった。
戸惑うおれをよそに、「松田くん」と呼ぶ、目の前の人。携帯との会話が済んだようで、高山さまはティーカップのふちに唇を近づけた。
「嵐の前の静けさっていいね」
「嵐……ですか?」
そんな前触れもなく言われても困る。「嵐っていったい何のことだ?」と頭をひねるしかない。話をしてみようと口を開いたら先程のことを話したくなった。
「そういえば、さっき前野せんぱいに会ったんです。しかも生徒会の仕事を手伝ってるそうですよ」
「なるほどね、聞いてるかな?」
今日の高山さまは様子がおかしい。誰に聞いているんだろう。ますますわからなくなる。
しかも、突然、高山さまは大声を上げた。耳をつんざくような声で、いきなり何がしたいんだろう。全然、わからない。
高山さまの口が閉ざされると、部屋中がきんと音を立ててから静まった。
「な、何なんですか、いきなり?」
「この部屋には盗聴器が仕掛けられている。ちょうどきみの椅子の裏側にね」
もう飛び上がって驚くしかない。
何だよ、それ!
「ていうか、それを言っちゃあまずいんじゃ」
盗聴器を仕掛けた人にばれてしまうけど、大丈夫だろうか。
「大丈夫だよ。ぼくは決めた。今まではあまりにも強大だと思いこんでたけど、もう我慢ならない」
あの、
話がまったく見えない。心にもあるとおり、「話についていけないんですけど」とたずねてみた。
「この学園を仕切っているのはだれだと思う?」
「生徒会のみなさまでは?」
高山さまはかぶりを振った。大げさに頭を動かしても、天使の輪が崩れないのはさすがだ。
「ぼくもこの位置に座る前はそう思ってたよ」
床を指差しているが、たぶん会長さまの恋人という位置を示しているんだろう。
「でも、本当は」高山さまの目線は椅子へと向けられる。
「過激派の連中が生徒会を操作していたんだ」
「そんな!」
「GMKよりはるか前に過激派は一つの組織になっていた。そのリーダーが……」