泣く子もだまる親衛隊

□泣く子もあばれる
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高山さまは話の途中で、立ち上がった。

「話している場合ではないね。早く部屋を出よう」

でも、それは遅すぎた。

鍵も扉も、ものともせず、目だし帽をかぶった男たちがなだれこんでくる。

「まずいな」

おれたちは逃げることもできずに、すぐに取り囲まれてしまう。

「残念だけど、あきらめるしかないみたいだね」

どうして高山さまは、こんな状態でも冷静にいられるのか。
縄を取り出した目だし帽の男たちは高山さまの体をぐるぐる巻きにした。

「くそ、高山さまにこんなことを!」

おれも横から縄をはずそうとするけど、おれの体にも魔の手がやってくる。
抵抗の末、縄で縛り上げられると、もう腕すら動かせないくらいぐるぐる巻きになっていた。

縄の先を目だし帽の男がひっぱっていく。自分の意志とは関係なく歩かされるおれたちは、どこかに連行されるらしい。

紙袋を頭からかぶせられ、だれかの手がおれの背中を強く押した。

かぶされた袋には口元の辺りに穴が開いていて、空気だけでなく、光ももれてくる。

扉の開く音。
エレベーターに入れられたようで、地下にもぐっていくイメージ。
見えないんだから、イメージに頼るしかない。

エレベーターが止まると、また縄を引かれ、無理矢理歩かされた。

どれくらい歩いたのか、縄をひっぱる力が弱まると、目的の場所に着いたことに気付く。
すぐに、じゃらりと金属のかちあう音がした。キーっとうるさいほどに軋みながら、何かが開かれた。

「うわ!」またしても、だれかがおれを突き飛ばす。
縄で手が使えないから、床に倒れこんだ、ちくしょう。

「袋をとってやれ。あと縄も外しとけ」

えらそうな声が袋を通して伝わる。口調からすると、たぶん目だし帽のリーダーはこいつだろう。

本当に袋が上に向かってひっぱられる。
あんまり乱暴な手つきなんで、とれたとき、床に顎が落ちた。すごく痛い。

久しぶりに広がった世界は薄暗い床で、何にもなかった。

何重にも巻きつけられた縄も、結び目を切っただけで、わざわざ解いたりはしてくれなかった。
縄とじゃれあっている間に、鉄の扉は閉まっていく。
鉄格子の先に目だし帽をかぶった軍団が去っていく姿が見える。
こういうのどこかで見たことがある。
もしや、留置場だろうか。
でも、トイレもベッドも窓もない。

「監禁されたみたいだね」

と、正面から声が聞こえてくる。
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