スーツアクター
□付き合う
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神林くんと付き合い始めて2週間が過ぎた。
神林くんはあれから毎日添い寝してくれている。
おかげで大学の講義も寝ずに聴けるし、身体のけだるさもなくてとても快適に過ごせているんだけど、返せるものがご飯くらいしかなくてとても心苦しい。
今日は神林くんが遊園地のショーに出ているので、おれは家でおとなしくレポートをやっつけている。
先週こっそり見に行ったら無言でものすごく怒ってたので、もうやめとこうと思った。
でも、ヒーローのスーツを着てセリフやSEに合わせて敵を倒していく神林くんの身のこなしはただ事じゃなかった。
「かっこよかったなぁ…」
思い出してはレポートを打ち込む手が止まってしまうので、結局全然進まなかった。
日が沈んで夕飯の支度をしていると、いつも通り風呂上りの神林くんがやってきた。
「DVD借りてきた」
「わあ!ありがとう!」
夕飯やシャワーをいつも通り済ませて、二人でDVDを観ることにした。
並んでベッドに寄りかかってリモコン操作で再生する。
おれがずっと気になってた作品を神林くんがレンタルしてきてくれた。
時代劇もので、殺陣だけじゃなくて心理描写も細やかで、時折挟む小ネタも面白い。
夢中になっていたせいで、主人公がピンチに陥るシーンで神林くんの袖を掴んでしまっていたことに気づかなかった。
「あっごめん」
ほっとひと息ついたところで気づいて離そうとすると、神林くんはおれの手をとってそのまま画面に視線を戻した。
神林くん、これ恋人つなぎになってますけど…。
「神林くんてかっこいいよね」
「は?」