短編
□極彩色の絵
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彼への気持ちがわからなくて、わからないまま描いた絵は形を成さないまま完成した。
彼は僕に恋心を抱いていると言った。
告白というよりは独白で、本当に独り言のように、自分の気持ちを確かめるように呟いた。
そのまま立ち去ってしまったので、僕の耳には消えそうな声と元気のない足音だけが残っている。
よそ見していたせいで表情も思い出せない。
僕は彼の元気よく喋る声が心地よかったし、作業の邪魔だけはしないように気遣ってくれるところも好きだった。
彼と同じ気持ちを抱いていた訳ではない。
それでも、告白されたことで彼とキスをすることを想像して嫌ではなかったし、興味も沸いた。
ただそれは男としての好奇心で、恋心ではない。
彼が何日経ってもうちに来てくれないので、僕は完成した絵を持って彼を訪ねた。