短編
□君に嘘を、
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おまえは、嘘をつかない。
「ユーリー!私、ユーリのこと大好き!」
知り合いがたくさんいる中、大声でおまえが言うもんだから、オレは周りの視線を気にしながらおまえにやめろ、って言ったけな。だけど。
「だって、好きなんだもん!」
おまえには、恥ずかしい、って言うのがなかったんだろうな。いつも真っ直ぐで、正直。
「ユーリ」
「ん?」
「私、絶対ユーリと結婚するからね!」
だからきっと、これもおまえの本音なんだろう。
オレはこの時、嘘をついた。なんと言ったかは覚えてない。だけど、オレの嘘はおまえを傷つけてしまう嘘だったのだろう。
「はは、だよねぇー……」
この時、おまえが無理して笑っていた顔が頭から離れない。離れられない。
「ごめんね」
なんで、おまえが謝るんだよ。謝らなければいけないのは、オレの方なのに。
「私、でもやっぱり好きだな」
オレの嘘に傷ついた筈なのに、それでも笑顔をおまえは送った。
オレは、
おまえに何が出来たのだろうか。
おまえは、
オレの言葉が嘘ということに気づかず旅だってしまったというのだろうか。
「いなくなるなら、いなくなる、って言ってくれよ……」
もう、帰ってくることのない君に、呟いた。
オレの嘘に君は、
どれだけ傷ついたのだろう
(もう一度会えたなら、オレは)