中編

□古びた写真
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家に帰り、私はやっと友人に夏祭りのことについて連絡をした。メールを送ると、10分も経たない内に友人から返信が返ってきた。メールを見る限り、明日は平気そうだ。

一段落つき私はふぅ、と一息つく。その体は自然とベッドにいた。ベッドに横になり、私は明日の夏祭りについて頭に思い浮かべる。

「楽しみだなあ……」
ただでさえ初めての都会のお祭りなのだ。都会の夏祭りはどんなものか、と知りたい気持ちが芽生える。

「祭だから浴衣かな……でも私、祭で浴衣を着たことなんてないんだよね……」
第一浴衣なんて持ってないし、と呟く。浴衣が無くても祭は楽しめる、という母の話を小さい頃から聞いてきたからだろうけど。

そんなことを思いながら、私は自然と拾った手帳を再び手に持った。
「持って帰って来ちゃったけど……いいよね」

明日、祭で返せばいいし。手帳が無くても、明日の予定くらいは覚えているだろう。それに、あそこにそのまま置いておく訳にもいかないだろう、と自身に思わせた。

「ユーリ・ローウェル……か」
なぜか、その名前は聞いたことがある気がする。……芸能人、だったりするのだろうか。それなら、名前を聞いたことあるのも納得がいく。

そこで、何となくベッドのすぐ横にある本棚を見ると、あるものが目に入った。確かこれは、小学生の時のアルバムだ。あの頃は遊ぶのが仕事だったから、毎日誰かと遊んでいた気がする。
そっとアルバムを開くと、様々な友達と写真を撮っている自分の姿があった。その中でも気になった写真を私は見る。

「これ、随分古い……」

小学1、2年生くらいだろうか。近所に住んでいた同じ歳の男の子二人と一緒に笑顔で私は写っている。確か私の初恋の相手が、この二人のどちらかだったんだよね。だが、私はこの写真を撮ってすぐ引っ越した為、今はもうこの二人がどうしているのかはわからない。

ふと時計に目をやると、時計の針は11時を指していた。もう、こんな時間か。祭のことを考えすぎただろうか。

「風呂入って……とっとと寝よ」

そう思ったが、体は動こうとせず。……一度ベッドに入ると、気持ち良くて出るのは中々大変なんだよね。

「でも、風呂に入らないのはさすがにきつい……!」

やっとの思いで私は起き上がる。そうして、私はそのままバスルームへと歩を進めた。




古びた写真




(私が風呂に行き、誰もいなくなった部屋のベッドにアルバムが一つ、寂しそうに置かれていた)







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