中編
□友人からの電話
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プルルルル
私が準備をしていると、携帯の電話が鳴り響く。
誰だろう、と私は携帯を開く。それは、今日一緒に祭に行く予定の友人だった。
「もしもし?」
「あ、さやね?やっと繋がったわ」
やっと繋がった。……あ、そういえば着信アリってのが何件かあった気がする。寝坊について必死になっていたので、あまり深く考えてなかったが。
「……で、どうしたの?」
「ええ……今日の祭のことなのだけれど」
「うん?」
私が問い掛けると、彼女は少し黙って、電話では沈黙が出来た。
「えっと……もしもし?」
何かあったのだろうか、と少し心配になりながら私は問い掛けた。すると友人は、口を開いた。
「凄く申し訳無いのだけれど……今日の祭、行けなさそうなの」
「……え」
行けなさそう?どういうことなのだろうか。私は聞いてみると、彼女はなんと、急用の仕事が出来てしまったらしく、いつ終わるかわからないらしい。
「今日は用事があるから無理、って上に何度も行ったのだけれど、どうしても出ろ、ってうるさくて……」
「そ、そうなんだ……。でもしょうがないよ。仕事、大事だし」
本当は、休みに仕事する必要なんてないから、一緒に祭行こう、といいたいところだが、そんなこと言ったら彼女の仕事がどうなるかわからないものだし。前から今日は祭に行こう、とは言っていたが、何しろ私は詳しい予定の連絡をするのが遅かったのだ。それで彼女が予定を入れてしまった、と考えれば自分の責任だと思える。
「前から約束してたのに……本当に申し訳ないわ」
「何それ、謝るなんて珍しいじゃん。いいよ、全然気にしないで。祭なんて来年になればまたやるんだから」
じゃ、仕事頑張って、と私は自分から電話を切った。
友人からの電話
今日は、家で一日を過ごそうかな。今更、他の誰かを誘うなんてこと出来ないし。……運、やっぱり悪いのだろうか。
そう思い、祭に持っていく予定だったバックから財布等を取り出そうとすると、ふと黒い手帳が目に入った。
「この手帳……どうしよう」
今日渡そうと思ってたんだよね、手帳。他の日に渡そう、という考えもあるが、手帳を見ても書いてある予定は今日のみ。また駅で会うとは限らないし、今日逃したら会える日は無いかもしれない。
その場でそんな事を考えたが、やはりどっちにするか決められず。
「まだ、祭までは時間があるし……ゆっくり考えようかな」
――もし、この考えの結果が、今の私が選んだものと違ったものだったならば、私はこんな悲しい思いをしなかったのだろうか。なんてことがふと頭をよぎった。
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