中編

□なんだかんだいって
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『あ、そうなの?なら、話しておいでよ』

……なんで、あんなこと言っちゃったんだろう。

あの人――ユーリの幼なじみらしい女性、ユーリに好意を寄せてた。ユーリを見ていたあの目は、絶対そう。
だけど、あたしと同じく彼に好意を寄せてると思うと嬉しくなっちゃったんだ。だって、彼のよい所をあの人はあたしと同じく見つけてたってことでしょ?だから、応援したくなっちゃって、ついあんな言葉を。……こんなこと、ユーリに言ったら怒られるかな。

「早く帰ってこーい!」

大声で叫んでみたものの、返事は無し。あるものと言えば、他人からの痛い視線だ。

「お姉ちゃん。元気だね」
「こら、近寄っちゃいけません」

……うわ、泣きてぇ。近寄っちゃいけませんって、変人に見えるのかあたし。…いや、一人で突然叫びだしたから変人か。って、自分でそう感じたらアウトだろ。

一人でボケてツッコミを入れていると、ふとあることに気づく。

「……あれ、ここどこだ?」

そんなの決まっている。ここは祭会場だ。…いや、さすがにそれはわかるよ自分。祭会場のどこの位置にあたしはいるのか、って話だよ。
辺りを見渡してここがどこか確認しようとしたが、祭会場が広すぎてどこかわからず。ここでは見たこともないお店が、ずらりとならんでいるだけだ。

「困ったな……」

ヒュウウウ ドンドンドン

「わお!」

な、何だ今の音!?
音が聞こえた方、空を見ると、そこでは花火が打ち上げられていた。…そうか、今の音は花火のか。
って、そんな呑気なことを言ってる場合じゃないな。花火も始まったことだし、きっとユーリは戻ってきてるはずだよな。だったら、早く見つけないと。……戻ってきてなかったらどうしよう。

「いやいや、大丈夫なはず!ユーリはきっとあたしを裏切らないぞ!」

たぶん。……たぶんとか自分で思ってどうする。やべぇ、心配になってきた。

とりあえず、今大事なのはユーリとの合流だ。だけど、ここがどこかわからない為、ユーリを探すのも苦難のわざ。ならば……。

「迷子センターへ直行だ!」

いやあ…頭いいね、あたし。迷子センターに行けば、待ってるだけでユーリが来るんだもん。探す手間が省ける的な。そうと決まれば、迷子センターに行こう。
そうしてあたしは一歩、歩を進めた瞬間、大事なことに気づく。

「迷子センターって……どこ?」

……………チーン。
駄目だ、完全に終わった。切なすぎない?これ。
あれかな、今からずっと一人で祭会場をぶらぶらする人間になっちゃうのかな、あたし。

「……そんなの嫌だー!」
「いったい、何が嫌だってんだよ」
「いやだから、今からずっと一人で祭会場をぶらぶらする人間になるのは……って」

あれ、今何か聞こえた気が。ゆっくり後ろを振り返ってみると、見覚えのある姿がそこにいた。その姿を見た瞬間、あたしは自然と笑顔になる。

「……ユーリ!やっと見つけたよ〜!」
「オレがおまえを見つけたんだっての」

よかった、ユーリだ。本物だ。

「あの人に、愛の告白されたりした!?」
「されてるわけないだろ、なんであいつに告白されるんだよ」
「だってそりゃあ……」

ユーリのことが好きだったと思うから。…なんて、言えないな。言ったところで、信じないだろうし。

「……全く、変なとこにいやがって。探すの結構苦労したんだぜ?」
「あたしも苦労したし!色々苦労したんだから!……子供連れの奥さんには変人扱いされるし」
「ま、事実上変人だしな」
「あたし変人じゃないもん!絶対!」

変人変人って何さ。あたしはかけらも変人などではない。…さっき自分で思ってしまったような気もするが、それはきっと気のせいだろう。

「ま、とりあえず今は黙って花火見ようぜ。これ見る為に、わざわざ来たんだからよ」
「うぐっ」

……た、確かに。




なんだかんだいって




(こんな広い場所であたしを見つけてくれて ホントは凄く嬉しかったよ)





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主人公とは180度性格が違う彼女ちゃんでした。そして頭の中はいつでも暴走状態。お疲れ様です。
 

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