短編
□触れるだけの口づけを
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相手と自分が同じ気持ちだったらいいな、と思う毎日。同じ気持ちか確認をしようとして終わる、毎日。
「また奉仕活動?いい加減、悪さするのやめたら?」
「好きで悪さしてる訳じゃねえんだけどな。おまえだって悪さすんのやめろよ」
「私だって好きでやってる訳じゃないもん」
”悪さ”はね。じゃあ奉仕活動はどうなの、って聞かれたら私は好きでやってるかもしれない。だって、奉仕活動って理由であなたと話すことができるから。
「じゃあ、なんでおまえ悪さするんだよ」
「うーん……わかんない。気づいたら悪さしちゃってる」
「なんだよ、それ」
「ユーリはどうなの?なんで、悪さするの?」
「オレはな……」
奉仕活動を理由にして私と話すことが出来るから、……だったらいいなあ。なんて、考えてみる。
「秘密、ってことで」
「秘密ぅー?ずるい、私は言ったのに!」
「それはおまえが勝手に言ったんだろ」
「違うもん!私、ユーリに聞かれたから言ったんだもん!」
そうは言っても、ユーリは口を開こうとしなくて。……何よ、言ってくれたっていいじゃん。
「もー!ユーリの意地悪。教えてくれたっていいじゃん!」
「オレはおまえのわけわからない理由とは確実に違うな」
「それ教えた内に入らなから!」
本当は私の理由、違うんだけどね。本当のこと言えば、ユーリは理由を教えてくれるかな。……ううん、ユーリは私のこの理由をうそだと思ってることはないはずだし。そんなこと、ないよね。
「つーか、おまえうそ下手だよな」
「……へ?」
「さっきの理由、本当は違うだろ」
「え、そんなわけ……」
「前にこの話した時”先生がムカつくから”って理由だったんだけどな。いかにも、中学生のガキが思ってそうな理由」
「う……」
そんな理由、言った覚えがある。今更、思い出しちゃった。もっと前に思い出してればよかったんだけど。
「あれも当たり前だけど嘘だろ?で、本当の理由って何なんだ」
「それは……」
……どうしよ、良いうそが思いつかないや。それに、またうそをついてもユーリにばれてしまいそう。でも、本当のことを言うのは、ちょっと勇気がない。
「な、なら!ユーリが先に理由言ってよ。ユーリが言ったら、私も言うよ」
「……信用できねえんだけど」
「言うったら言うもん!だから、教えて?」
そうお願いしてみると、ユーリは教えてくれるのか、口を開いた。
「奉仕活動を理由にしておまえと話すことが出来るから、って言ったらどうする?」
「……もしそう言ったら、」
触れるだけの口づけをあなたに
(つまり、私たちは同じ気持ちだったんだね)
(オレは例えの話をしただけなんだけどな)
(…本当、ユーリって意地悪)