※夢キャラ名固定:リリア


カランカラン
誰かが外に出る音が聞こえた。この音は、扉が開く音だ。

「ありがとうございましたー」
「ちょっとお嬢ちゃん、これいいかい?」
「はい、ただ今!」

……はあ、疲れる。どうして今日、リリアはいないわけ?熱とか言ってたけど、バカが熱なんて出すのか?
でも、あの子はずる休みはしない子だ。きっと、熱と言うのは本当だろう。そのおかげで、接客業は今日あたしだけになってしまった。

カランカラン

「いらっしゃいま……」

新しくやって来た客に向かって笑顔をおくろうとしたところで、あたしは止めた。……あれは、不良っぽい学生だ。いやもしかしたら不良かもしれないが。そして、リリアが想いをよせてる人。

日めくりカレンダーに視線をうつすと、そこには木曜日と書かれていた。……ほんとだ、この不良くん木曜日に来てる。
だったら、リリアは相当な苦痛だったろうな、今日休むの。…運の悪い子だ。

「……これ、頼む」

不良くんは特にパンを選びもせず、受付にやってきた。というより、辺りを見渡しながらパンを適当に取っていた、というところだろうか。……こんなうまいパンを適当に選ぶなんて、こいついい神経してんな。

「合計で430円になります」

とっとと金払って、出ていってくんないかな。気づいたら客はこの不良しかいなくなっちゃったし、二人でいるとリリアに何されるかわかんないし。とは言っても、単純にこの不良が嫌、というのが一番の理由だが。

「なあ」





「……はい?」

……なんでこの不良はあたしに話し掛けてくんだよ。思わず返事が遅れてしまった。
しかも『なあ』とはなんだよ、『なあ』とは。金出してとっとと帰ってほしいのに。
全く、なんでリリアはこんなやつが好きなんだか。

「今日は、いないのか?」
「いないって……何が?」
「あいつだよ。あんたとよくいる」

あたしとよくいる人?……リリア、のことだろうか。でもこの不良、なんでリリアのことなんか…。
ふと不良に視線を移すと、その表情はある人とよく似ていた。彼が来なかった木曜日に見た、リリアの表情に。

「……あ」

そうか、そういうことか。リリアと同じく、わかりやすいやつだ。
あたしは彼から出されたお金を、静かに受けとった。





(ごめんなさいね、リリアはいませんのよ。オホホホ……)
(……いきなり性格変わりやがったな、こいつ)
(また次の木曜日にでも来て下さいな、その時にはリリアもきっといますから)


―――――
拍手お礼文、『木曜日の楽しみ』でした。拍手ありがとうございます。
実は両想いだった、という感じですね。この話の続きはあるような無いような
一話目はこちら


ま、まだ何かしてくれるのだろうか。



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