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□借りぐらしのアリエッティ
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スタジオジブリの新作と聞いて、観る前は「千と千尋の神隠し」や「となりのトトロ」みたいな冒険っぽいイメージを抱いてました。が、実際に観ると、内容は想像と大きく異なったものでした。私はとても好きだと思う作品ですが、人によっては物足りなかったり、退屈に感じてしまうかも知れません。
主人公は小人のアリエッティ。14歳の女の子で、両親と三人で人間の家の軒下に住んでいます。人間の小指ほどの大きさみたいで、お砂糖やティッシュなど、生活に必要なものを必要なだけ、人間から内緒で借りて(もらうのと同じですね)暮らしている。そこへ、心臓の病気で手術を控えた人間の少年・翔がやって来ます。母方の祖母の家に一週間という期限付きで療養に来たのですが、「人間に見られてはいけない」アリエッティは、彼に姿を見られてしまう…。
というのが広く紹介された粗筋です。私はてっきり、人間に存在を知られた小人が捕まえられそうになったり(そんな場面もありますが)大立ち回りがあるのかなと踏んでいました。
でもこれは、恋愛映画なんだと思います。家族や生活を守るため、翔に関わるまいとするアリエッティですが、物思いに沈んだ顔は恋煩いのようです。
登場人物も最小限。アリエッティの家族と、後に彼らを新しい生活に導く小人の少年。そして人間は翔と祖母、家政婦だけです。翔の両親は離婚し、母親に引き取られますが、多忙のため翔が病気であっても側にいてくれないという孤独な状態です。いっそアリエッティと翔が駆け落ちでもして行方不明になり、捜索のため母親が出てくる展開もありかなとか考えたものの、そんな雰囲気の話ではありませんでした(^_^;)
また原作が英国児童文学なため、映画の舞台は日本なのにイギリスっぽいです。祖母の家の作りや、ドールハウスなどが細部まで丁寧に描かれているのは流石です。そして緑の多い土地らしく、草木がたくさん描かれています。美しいと同時に観ていて癒される稀有な映像だと思います。
結局、翔とアリエッティは互いに惹かれながらも一緒にいることは叶わず、人間に知られた小人一家は新しい場所へ旅立つことになります。
出発前に、二人は別れの言葉を交わすのですが…。翔が最後にアリエッティに告げる一言が、私はとても印象に残っています。恋の究極の言葉とも取れるし、それを越えた意味なのかも知れません。やがて流れる叙情的なあの音楽と共に、切ないけれど爽やかさを感じる作品でした。

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