Semi Sweet・2
□あなたとの距離/嘘と真実
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嘘と真実(よりぬきお題より)
一時間目、サボってしまったなぁ。
紫色の煙を目で追いながら、屋上のフェンスに寄りかかる。
吸殻を携帯灰皿に入れ(証拠は残さんのよ)、体育の授業をしとるどこかのクラスをなんとなく眺める。
けれど頭の中ではあいつの事を考えてたりする。
***
今朝、車から降りてきたあいつは、俺の顔を見るなり嬉しそうに寄ってきた。
「彼氏?」
聞いたら、困ったような顔で「・・・うん」と答えよった。
それで俺の反応確かめようとしてる。
かわいらしい子やな。
だからわざとその嘘に騙されたふりをする。
前にお姉さんが車で迎えに来たの見た事あったし、車種も一緒やった。
どうせ、お姉さんの旦那か彼氏やろ。
必死になってそんな嘘で俺の事捕まえようとしとる。
でもそんな簡単に捕まらんよ。
***
「あっ!仁王君これ」
教室に戻ったら、あいつが俺にプリントを差し出してきた。
「一限目自習だったの、これ提出してくださいだって」
「あんがと」
プリントを受け取ると、なんや言いたそうな目つき。
じっと見つめると、俯いてぼそり呟く。
「本当は知ってるんでしょ?」
どきりとした。
わずかな沈黙。
前髪が邪魔で表情が見えん。
泣いちょる?もしかして?
「・・・」
ゆっくり手を差し伸べようとした時、あいつは顔を上げた。
あわてて手を引っ込める。
「仁王君、自習だって知ってたんでしょ、だからサボったんでしょ!」
「・・・」
「もう、ちゃっかりしてるよね」
プリント忘れないでね。
最後にしっかり釘をさしてあいつは友達の輪の中に入っていった。
その背中を見て、自嘲的な笑いがこぼれる。
気ぃつけんと、危ない危ない。
捕まってしまうとこやったね。
★☆★
2005/03/26
WEB拍手のお礼小話でした。
普段の仁王ってこんな感じかなぁ・・・と思って書いたんですが、どうですか?
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