Semi Sweet・1
□君に会いに行く
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「もう、だからどうして今日が土曜日で学校が休みなのよ〜」
さっきから何度も、それこそどうにもならない問いかけを繰り返す。
受話器の向こう側は溜め息の嵐だ。
君に会いに行く
「そんなこと俺に言われてもな・・・」
「だって、他に言う人いないじゃん、こんな天気のいい土曜の午後に暇をもてあましてるのは地味ズくらいじゃないの」
「・・・切るぞ」
「嘘嘘、メンゴ!」
死語になってる台詞、日常に使っているのは誰かさんの影響。
そしてちょっと短気だけれども面倒見のいいクラスメートは、なんだかんだで私の話を聞いてくれる。
今日は大好きな人の誕生日。
女の子にモテる彼は毎年たくさんの子からプレゼントを貰っている。
だけど、今年はその光景は見れない。
なぜなら今年の11月25日は土曜日だから。
一人一人にお礼をいって受け取る綺麗にラッピングされた箱の中。
本気の気持ちだって、きっとある。
それを見ないで済むのは嬉しいけど。
会えないのはもっと悲しい。
「新生千石清純が見たいのに〜」
「新生って、昨日とどう違うんだ」
「もう、そんなこと聞き返すのが南がもてない理由だよ」
「・・・」
お前だって同じだろって、呟き微かに聞こえた。
確かにね。
もてませんよ、吃驚するくらいですよ。
今まで付き合った人はいませんし、告白されたこともありません。
そんな私があの千石清純に片想いなんて、片腹痛いですよね。
「そこまで俺、言ってないだろう」
「いや、言ってる地味な瞳が如実に語ってる」
「電話でみえるかよ!」
突っ込みはすばやいんだよね。
そんな風にぐだぐだ話してたら、一旦南が言葉を切った。
「おまえさ、そんなに気になるなら会いにいけば?」
「い、いけるわけないじゃん」
「なんでだよ」
「だって千石だよ、お誕生日だよ、きっと女の子と一緒じゃん」
「案外一人かもな、あいついつも女子に囲まれているけど今はつきあっているやついねーし」
「そ、そうかな」
「そうだよ、もし一人だったら会いに行くか」
「行きたいかも」
「かもって・・・あー、なんか面倒だな、千石どうする?」
へっ?
せ、千石っておっしゃいましたか。
まさか、まさか、まさか。
ガサゴソいってる受話器の向こうで「もう南ったらまだ肝心なとこ聞いてないデショ!」って声が聞こえて。
それがさっきまでの話題の中心の人で・・・
(どうしよう)
切っちゃおうかなって思ったけど。
それはやっぱり、まずいよね。
お誕生日の午後。
南の部屋にいる千石。
きっと私達の会話すべて聞いてたんだよね。
それはやっぱり。
もう、アレってことでしょう。
「もしもし」
彼の声がいつもより緊張を滲ませている。
私も恥ずかしさで手には変な汗がべっとりで、声もちょっと上ずっているけど。
これだけはきちんと言うんだ。
「お誕生日おめでとう」
ありがとうって言葉の後、彼もちょっとほっとしたようで。
いつもの口調で「新生千石清純見においで」って、笑いながら誘われた。
うん。
君に会いに行くよ。
2006/11/25
やばい、本当にさっき気が付いたよ(いつさんの日記でね)。
今まで書いたものの中で一番時間かかってません、もう思いつきもいいところですよ、そのうち加筆修正するかな・・・
とりあえずおめでとうキヨ!(南がでばってるのは気のせいだと思うよ、うん)