Semi Sweet・1
□Wonderful day
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「わぁ、いい匂い」
学校からの帰り道。
道端から甘いキャラメルの匂いが漂っていた。
Wonderful day
ポップコーンの屋台だ。
店員のお姉さんが「いらっしゃいませ〜」と声をかけてくる。
美味しそうだな。
ふらふらと吸い寄せられて、屈みこんで、ガラス越しに弾ける物体を眺める。
「欲しいのか?」
「ふえっ!」
不意打ちだよ。振り向いたらクラスメートのキッド君がいた。
なんか食い意地張ってるところ見られたようで恥ずかしい。
あたしはポップコーンの機械から一歩離れる。
「えっと、なんていうか、いい匂いがしたから、それだけなの」
これじゃ言い訳してるようなものだ、ああ、きっとあたし顔が赤いに違いない。
そんなあたしにお店のお姉さんは優しく笑うと、大きなさじで出来上がったばかりキャラメルポップコーンを紙コップに入れながら。
「ひとつどうですか?可愛い彼女に」と、キッド君に向かって言った。
な、なに言い出すのこのお姉さん!
キッド君はふむ!と覗き込みながらひとつくれと注文する。
えええっ〜。
キッド君は紙コップを受け取ると、あたしに渡し、さっさと歩き出す。
「優しい彼氏さんね」
お姉さんがこっそり耳打ちする。
彼氏じゃないんです。
そう反論する前に、キッド君の姿が見えなくなってしまいそうだったので。
あたしは会釈だけして、彼の後を追った。
「まってキッド君」
「・・・」
「まって、これもらえない」
立ち止まり振り返ったキッド君はあたしと手元のポップコーンを見比べると。
ひと掴みして、食べる。
「甘いな、でも不味くはないが」
不味いからいらないって意味じゃないよ。
キッド君って少し天然?
「そうじゃなくて、あたしキッド君の彼女じゃないし」
「なんだ、そういうことなら彼女になればいいことだろう」
「はぁ?」
「今日から俺の彼女になればいい」
「・・・」
「きっちりかっちり、そういう関係になろう」
「!」
最初はあたしだけが見ていた。
でも気付いたら、彼もあたしを見てることが多くなって。
二人の目があったところで、いつも変なタイミングでシュタイン博士に話しかけられたり。
パティやリズがじゃれてきたりして。
はっきりとしない日々をすごしてきたけれど。
曖昧な関係は今日でおしまい!
きっちりかっちり、彼氏と彼女になりました。
2008/07/27
拍手お礼でした。