Semi Sweet・1

□04.自分に向かう視線に気付け
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聞き違いだと思った。

じゃなかったら、白昼夢を見ている。

そんな風に思っていたから、あたしは何の反応も返せなくて。

ぼうっと、ほうきを雑に動かし続けていた。

それに対し、観月君が今の聞いてましたか?と、眉間に皺よせてあたしを睨んだ。

まるで先生みたいだ。

思わず逃げ腰になりそうだったけど、あたしは頑張って返事をする。



「だって観月君、今あたし達がなにしてるかわかってる?」

「わかってますよ」



バカ澤の尻拭いです。

まるで親の仇でもあったかのように憎らしげに答える。



「あのバカが、懲りもせずに学校で焚き火をするから」

「焼きイモって美味しいもんね〜・・・いや、焚き火はまずいよね」



女の子が焼きイモ好きなのは普通のことでしょ?

(もう、そんなに怖い目で見なくてもいいのに)

本当に厳しい人なんだから。

あたしは観月君のごきげん取りをしながら、焚き火の残骸を片付ける。

今から少し前。

突如裏庭から白い煙があがり。

なんだろうと近づいたところ、観月君も同じようにいて。

煙の中心にいた赤澤君は、観月君の顔を見た途端に逃げ出したのだ。

(あたしも逃げれば良かったなぁ)

たまたまその場に居合わせてしまったあたしはとばっちりを受け。

そのまま二人で焚き火の後始末をするはめになっている。



「はぁ〜」



ため息くらいつく自由はあるよね?

横を見れば、半焼けのお芋をなんのためらいもなく捨てている観月君。

ちょっともったいないなぁ。



「赤澤が足であわてて火を消したから、泥まみれです」



どっちみち食べれませんと釘をさされ、あたしは曖昧に笑う。

あなたエスパーですか?

心の中でツッコんでみても、それを言葉に出来るはずもない。

とりあえず観月君の整った横顔を眺めながら、ほうきで枯葉を集める。

(こうしてみると本当に綺麗だな)

こんなに近くで話すのなんて、前の席がえで隣になったとき以来だ。

あの頃はよく勉強みてもらったな。

観月君は顔だけじゃなくて、頭もいいんだよね。

教え方は怖かったけど、わからないところはちゃんと最後まで面倒みてくれたし、案外世話好きだって思う。

それと、物の考え方も、同じ歳とは思えないくらいしっかりしてる。

きっと単純なあたしの思考なんて簡単に読めるだろうし、あたしなんかよりずっと色々な事を考えているんだろうな。



そんな観月君だから。



きっと誰かに恋したときもスマートに物事を運んでいくんだろうって。

ちょっと胸が痛くなるけど、いつもそんな風に思っていた。



なのに。



こんなところで。

観月君は言ったんだ。

あたしのことが好き・・・だって。

あたしはやっぱり信じられないです。



「ねぇ、さっきの言葉って、からかってるんだよね?」

「まさか!」



強い口調で言われて、あたしははっとする。

せっかく集めた枯葉もかまわず踏み潰してるけど、今はそんなのかまってられなくて。

ただ、ただ彼に見とれる。

漆黒の瞳にはあたしだけが映っている。

こういう時ってどうすればいいの?

助けを求めるように、観月君に縋るような視線を送れば。

この場にそぐわない笑顔を浮かべていた。

次の言葉を期待されてる!

無言の圧力ってやつじゃないのこれは。

早くなにか言わないと・・・でもなにを?

一応告白されたんだ、へ、返事をすればいいんだよね?

すうっと息を吸い込んでから、あたしは「あの・・・」と言いかけたが、それよりも早く。



「今は返事はいりません」



たたみこむように言われた。

どうゆうことそれ?

戸惑うあたしをよそに、観月君は「どいてください!」ってあたしを押しやる。

片付けが再開されたようだ。

あたしの足元に散らばった落ち葉を集めて、ビニール袋につめる。

袋の先を結ぶと、それをそのままあたしに渡す。

つい無意識で受け取ると、後はよろしくって・・・ちょっと押し付けるつもり!

文句を言う前に、僕はこのまま部活がありますから、あなたは何かあるんですか?って、さらりと言ってのける。

あたしは帰宅部だから特にないけど。



「・・・わかりました、捨ててくればいいんでしょ!」



相手は観月君だ、何を言っても勝てるわけがない。

あたしはぶすくれながら彼に従う。



(本当にこの人あたしの事好きなのか疑わしいよ)



「好きですよ」

「はう!(心読まれた?)」

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