Semi Sweet・2
□恋愛的瞬間
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ずっと観月のことだけ考えていられればいいのに。
恋愛的瞬間
でもそんな恋愛だけの女は観月はきっと嫌いだろう。
あの意地悪そうな物言いで「あなたはよっぽど暇人なんですね」と私を斬って、後は誰にでも見せる愛想笑いでその場は終了。
私は何も言い返せなくなるんだ。
わかっているのに。
私は観月が好きで好きで。
観月の世界には私みたいなのが入り込めるはずないのに、もしかしたらとか、甘い夢を見てしまう。
現に同じクラスにいても、私達は会話すらまともにかわしたことないのに。
少女マンガや小説のようにそれでも、なにか起きるのではとか。
そんなことばかり考えてしまう。
だから、たまたま私が課題を忘れて、教室で一人残されているところに、偶然観月がやってくる。
ただそれだけの事で、心臓がありえないくらい早い動きをする。
観月は私をちらりと見ただけで、自分の席に着くと、なにかを書き始めた。
何をしてるんだろう?
聞きたくても、沈黙は重く私の喉に張付いて、言葉として出てくれない。
私は仕方なく、課題の続きをやる。
本当はほとんど出来上がっているノートをまた最初から見直す。
「くしゅん」
日も落ちてきて寒くなってきた。
我慢が出来ず、生理的にでたくしゃみに、観月の背中が反応して、私の方を見た。
「寒くなってきたね」
あはは、と誤魔化して笑うと観月は立ち上がり、私の前の席まで移動して横向きに腰を下ろした。
「まだ終わらないんですか?」
観月は私のノートを覗き込んでいる。
あ、綺麗な目だな。
この瞳が私だけを見つめてくれたらいいのに。
こんな時でさえ、私は自分の欲求のままに観月を捉えてしまう。
「これとこれ」
ふと、観月の白い指が私のノート上を指差す。
「何?」
「間違ってます」
「・・・やり直しますよ」
消しゴムをかけて、もう一度。
でも、どこが違うのかわからない。
観月はそんな私の様子に大きなため息をついた。
観月は頭がいいから、こんな問題あっという間かもしれないけど私には無理。
それが顔にでてたのか、観月は丁寧に解説をし始めた。
またため息をつかれるのは嫌なので、私はそれを必死に聞き、そしてなんとか間違ってた問題を終わらせた。
「出来た・・・」
「出来ましたね、早く提出してきたほうがいいですよ」
「うん」
ノートを閉じ立ち上がる。
観月はやれやれといった様子で、自分の席に戻って行った。
ありがとう。
その背中に言うと「どういたしまして」と返事がかえってきた。
このまま、職員室に行ってノートをだして、それでおしまい。
ほらね。
何も起きない。
現実はこんなものだ。
私はそれでも今この教室に観月と二人っきりでいられた時間が惜しくて、わざとゆっくり帰り支度をした。
コートにマフラー。
鞄も持ったし、後は出るだけだ。