Semi Sweet・2
□それは祈りにも似ていて
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「コンソレ、やっぱり負けちゃたよ、仕方ないよ相手は氷帝だもん、でもここまで残れただけでもすごいと思わないとね、昨年までうちなんか無名だったんだから、えっ?観月君、やっぱり元気なかったね、しかたないよ」
塾のテストがあって、どうしても見に行けなかった試合の結果を友人から聞いた。
携帯を切ると、あたしはため息をひとつ。
そうかうちの学校負けたんだ。
これでもう三年は引退なんだね。
無理してでも、やっぱり見たかったな。
観月君の試合。
それは祈りにも似ていて
よりぬきお題より
観月君とはクラスが一緒になった事もなければ、話をしたこともない。
それでもあたしは部活姿や礼拝で賛美歌を歌う彼の姿に憧れ、いつも見ていた。
試合が終わり元気をなくしている彼に何かをしてあげたいが、それは彼の近くにいる人がすることで、あたしの出る幕はない。
それでも、それでも、なにかしたい。
色々考えた結果、薔薇を送ってはどうかな?って思った。
観月君は薔薇がすごく好きで薔薇柄のもの集めていると前に寮生の子から聞いた。
あたしは早速花屋に急いだ。でも花って高いんだね。
中学生の小遣いじゃままならない。
中途半端な量を買うよりも、赤い薔薇を一本だけ買った。
これを明日、観月君のいる教室に飾ろう。
好きな薔薇を見て、観月君の心が少しでも和らいでくれればいい。
翌朝。
誰かに見られるとまずいので、かなり早い時間にあたしは学校に向かった。
最初は自分の教室に行き荷物を置いていくと、次に観月君のクラスに行った。
まだ誰もいないけど、他のクラスは緊張する。
棚の上に置いてある花瓶を掴み、それを生ける為に教室から出る。
人が来たらどうしよう、極度の緊張感で汗が無駄に流れる。
水を入れ薔薇をさし、教壇の上に置くと、そこにクラスの座席表が貼られているのが目に入った。
観月君の席は・・・窓際の後ろだ。
それなら、ここより後ろの棚の方が目に付きやすいかも。
あたしは後ろの窓寄りの所に花瓶を置いた。
「これでよし」
そして教室をでた。
廊下に出た途端、ギリギリのタイミングで観月君が階段からこちらに上がってきた。
こんな早く来るなんて思わなかった。
遠かったけど、顔色もよくない、昨日はあまり寝てないのかもしれない。
あたしは怪しまれないためにも、何もなかったような顔をしてそのまま歩き続ける。
二人の距離は縮まり。
そしてすれ違う。
もともと色白だけど、今日はぬけるような白さだ。
やはり疲れているだろう。
そのままドアの開く音がして、観月君が教室に入っていくのがわかった。