Semi Sweet・2

□素直じゃないんだから
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素直じゃないんだから
よりぬきお題より

「それ、可愛いね」

淳があたしの携帯ストラップを指差す。

黄色のアヒルがついたそれは先週買ったばかりの物だ。

「定規にクリアファイル、シャーペンに至るまで全部アヒルだ、本当にアヒル好きだよね?」

意味深な、くすくす笑い。

それは暗に彼の友人、柳沢君を好きだよね?と聞かれているようで。

あたしは俯いて黙り込む。



柳沢君は同じテニス部である、淳や観月のように人目を引くかっこ良さや派手さはないけど。

ふざけた口調の中に強さを秘めていて。

ただのお調子者なんかじゃないところや、常にポジティブなところとかがすごくいいなとあたしは思っている。

あひるを連想させるあの容姿や喋りもあたしには愛らしく見え。

お店でアヒルグッズを見かけるとつい彼を思い出し手をだしてしまうのだ。



淳は制服のポケットから自分の携帯を出すと、それをあたしの前にチラつかせた。

「それって?」

そこについてるストラップはあたしと同じもの。

なんで?

「お揃いだね」

またくすくす笑い。

「嫌がらせ」

「まさか、あっ慎也だ」

「よ、呼ばなくていいよ」

あたしの発言を無視して、たまたま廊下を通りかかった柳沢君を呼ぶ。

「なんだーね、俺は忙しいだーね」

「ほら慎也、アヒル」

自分の携帯と、いつの間にかあたしの携帯まで持ってる。

二つのストラップを柳沢君は見比べる。

「二人して、お揃いを見せびらかすつもりだーね、付き合ってられないだーね」

えっ、違う。

柳沢君はアヒル=自分とは思ってないみたいで、それはそれでいいんだけど。

これじゃ、まるであたしと淳が仲良しみたいじゃない。

俺は急いでるだーねと、柳沢君はすぐに行ってしまった。

「淳やっぱり嫌がらせじゃないの!」

「違うよ、本当に鈍いね」

「何がよ」

「俺がなんでわざわざこんなの買ったと思ってんの」

「・・・・」

な、何よ、何で急にマジな顔で見つめてくるの。

その強い視線に、目が逸らせないよ。

心臓がどくんとはねた。

淳の手が伸びてきて反射的に、あたしはびくつき目を閉じた。

「・・・・?」

でも、何も起こらない。

ゆっくり目を開けると、淳はいつものくすくす笑いを浮かべていた。

「じゃあ、そろそろ部活行くかな」

「あの、淳・・・」

「またね」



淳の後姿を見送りながら、あたしは携帯ストラップのアヒルを指で弾いた。

(わけわかんないよ、淳)

あたしは小さく「淳の馬鹿」って呟いた。



★☆★

2005/05/01

WEB拍手お礼小話でした。
淳を書くための練習みたいな感じで、この次は長いお話が書いてみたいです。

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