Semi Sweet・2

□お姫様だっこ
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お姫様だっこ
(よりぬきお題より)



今日は午後から体育館で身体測定があった。

体重とか胸囲のサイズとか、気になるトコはあるけど、あたしが一番気にしてんのは・・・

「なんや、浮かない顔やな」

「忍足」

あたしの前に立ちはだかる大きな影。

見上げなきゃいけないくらいの彼の身長は多分180近い。

それにくれべてあたしは、学年一のチビだ。

「いいよね、あんたはでかくて、また伸びたんじゃない」

「そういう自分は?」

「・・・・ミリ」

「はっ?」

「五ミリしか伸びてないの、今だ150の大台に乗れないのよ」

「(150が大台なんや)でもまだ成長途中やん、今に伸びるんやないの?」

「そう思う?」

「きっと伸びるでしょう」

なんで標準語になるんだ。

目も泳いでるし。

「でも、背が低いのも可愛いからいいと思うで」

「そんなことないよ!」

高いトコに手が届かない。

それがどんだけ大変だが、電車の網棚、あれがまた微妙な高さなんだよね。

届くことは届くけど、やっとって感じなので、車内が混雑し始めたら仕方ないから荷物乗っけるけど。

降りるときが大変で、おろせなかったらどうしよーかと毎回スリリング。

そんな苦労(?)話をあたしは忍足にこんこんと語った。

「・・・・」

「笑うなら声にだしてください」

「・・・・笑ろうてないよ・・・・あれやな、自分も結構大変なんやな、そうか網棚か」

「(なんかむかつく)いいよ、忍足にはどうせわからないでしょうね、大体そんなに背が高かったらあたしなんかと見えてる風景も違うもんね」

忍足までとはいかないけど、後10cm、いや5cmでいいから背が高くなりたい。

落ち込むあたしを前に忍足はにやにや笑っている、なに?っと思った瞬間。

忍足の腕が伸びてきて、せーのっていう掛け声とともにあたしは抱き上げられた。

「ふえっ!な、なにすんの」

こ、これってお姫様だっこってやつじゃ。

「暴れんなや、落っことすで」

「やだ下ろして」

「ほらよう見てみ、これが俺の見てる風景」

「・・・」

なっ?別にそんなたいした事あらへんやろって、忍足は笑う。

抱き上げられているせいで、ものすごく近い場所に忍足の顔があって、あたしはそれが恥ずかしくて顔を赤くする。

「・・・わかったから下ろして」

急に大人しくなったあたしに、忍足ははいはいと言って静かにその手を離す。

そして・・・

無事に降りたあたしの耳元に、体を傾けてこう囁いた。



「俺チビ専だから、そんなに大きくならんでええよ」



あたしはもちろん忍足を殴って駆け出した。

「冗談やないのに・・・」

そんな叫びも聞こえたが、あたしは走るのを止めなかった。



★☆★

2005/05/01

WEB拍手お礼小話でした。
大きい彼と小さい彼女のCPは可愛くて好き。

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