Semi Sweet・3
□祭りのあと
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今日は夏祭り。
そして大好きな南との久し振りのデート。
祭りのあと
夜道を二人で手を繋いで歩く。
見た目は涼しげなのに、思ったより暑い浴衣(でも南に見せたかったし)と、はき慣れない下駄で、歩くのが遅れがちな私だけど。
ちゃんと南は合わせてくれる。
最初は、先にずんずん行っちゃったけど。
途中で気づいて、あれって顔して、手を伸ばしてくれた。
たとえばこれがキヨだったら、最初からさりげなく手を繋いで、ゆっくり歩いてくれるんだろうけどね。
そんな風には、出来ない、慣れてない、南が私は好き。
見上げないといけない頭一つ分の身長差も。
日に焼けた腕と、豆だらけで擦り傷のある手も。
そんなものひとつひとつが南なんだなーと改めて思うと。
なんだかすごく嬉しくなる。
うちの学校はスポーツが盛んだから、テニス部の、それも部長をしてる南に夏休みは皆無。
今日だって、無理に予定空けてくれたんだろうな。
浴衣姿じゃなかったのは残念だけど(南って絶対に似合うと思う)、今日着てるシャツは初めて見るものだし。
もしかして、おめかし(笑)してくれたのかな?
そんなことがすべて愛しい。
「なに笑ってんだ」
「あっ、うん」
かちかちと私の下駄の音が住宅街に響く。
こんな時間に南といるのは初めてだから不思議な気がしたのよ。
そう言うと、なるほどなと相槌をうつ。
南と普通にデートしても、夕方には別れてしまうから(その辺はしかたないよね、門限もあるし)。
そんないつもと違う時間帯にさえ、どきどきする。
このまま二人でずっといたいよ。
でもそんな時間も、もうすぐ終わる。
私の家の門が見えてきた。
立ち止まり、繋いだ手を離す。
向かい合わせになって、南を見たら私の好きな笑顔。
「あんまり夜更かしすんなよ」
「してないよ!ねぇ、南?」
「なんだよ」
南の顔をじっと見つめる。
キスしたいなぁ。
言葉に出さなくても、そういうのはすぐに相手に伝わる、と思う。
南は私の肩に手を置くと、そうっと顔を近づけてきた。
私は目を閉じる。
暗闇の中、南の息遣いを感じる、そして。
唇でなく、おでこに柔らかい感触。
私は途端に目を開ける。
「な、なにそれ?なんなの今のは?」
「何ってキス」
「もう、南ってば信じられない!どうしてここで、額にちゅーなの!」
「お前、声がでかい」
南の大きな手が私の口を塞ぐ。
むうーーーーー。
じっと睨らんで、その手を離させる。
「・・・仕方ないだろ」
ため息混じりに南は語りだした。
お前の家の前で、そんなことしてもし両親に見られたらどうすんだよ。
近所の人が通らないとも限らないし、そんなのお前だって困るだろ。
それからさっき、たこ焼き食ったし。俺、青海苔とかついてるよ。
「南って・・・」
私が目を閉じ、南が額にキスしたのはほんの数秒の事。
その瞬間にそんなに色々どうでもいいこと考えてたの?