Semi Sweet・3
□一緒に逃げよう
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ダメツナはあたしのご近所さんで、あたしは毎日彼の家の前を通って登下校している。
それはあたしの日常で、別になんてこともなかったのに・・・
昨年あたりから、あたしはここを通ってある声を聞くたびにどきどきしていた。
一緒に逃げよう
(よりぬきお題より)
(あっ、また来てるんだ)
ツナはよく窓を開けっぱなしにしているから、丸聞こえなんだよね。
楽しそうな笑い声。そんなの教室じゃ聞いたことないよ。
帰宅部で放課後は特にすることもないあたしは、ここを通るたびに聞き耳をたてて、わざとゆっくり歩く。
(いいな、あたしも仲間に入りたいなぁ)
それは別にツナと遊びたいわけではなく。
時折聞こえてくるあの声。
クラスメートの山本武君が来てるときだけそう思ってしまうのだ。
山本君は野球部のエースで、女の子にすごくもてる。
クラスの中で彼を好きな子も多い。
でも本人は女の子と付き合うよりも、ツナや獄寺なんかと遊んでいるほうが楽しいみたいだ。
今日は部活休みだから、また遊びに来てるんだね。
獄寺君の声もする。あたしは、立ち止まり玄関のドアを見る。
この向こうに彼らが居るのか。偶然出てきてくれないかな。
そして、あたしを見て「お前この近所なのか?」とか会話が始まったりしてさ。
でも、実際あたしは山本君と二人っきりで話をしたことがない。
だから彼がどんな風に話すのか、相手の顔をしっかり見るのか、それとも恥ずかしくて逸らすのか、そんなことも知らないでいる。
こんなあたしはきっと彼に思いを告げるどころか、友達にもなれないよね。
自嘲的な笑みをこぼし、そのまま通りすぎようとした時。
奇跡が起こった。
なんかどたどたするなぁーと思った途端、ドアが開き、山本君が出てきたのだ。
硬直するあたし、山本君とはしっかり目が合う。
「あれ?おまえ」
山本君は驚いてるみたいで、何かを言いかけたが部屋の中から「待ちやがれ!」と誰かの叫び声がすると、ちっと舌打ちをして、あたしの・・・あたしの手を掴んだ。
「一緒に逃げよう」
「えっ?」
なんだかわからないまま、ものすごいスピードで彼は走り出す。
あたしはほとんど引きずられる状態。そして・・・
「果てろ!」
その声が背後でしたかと思うと、ものすごい爆発音がしてあたりは煙につつまれた。
***
何があったのか良くわからなかったけど、彼が、山本君があたしを守ってくれたようだった。
「山本君今の爆発って・・・」
「フーッ、大丈夫か、怪我ねぇーか?」
「へ、平気です」
「そっか良かったな、獄寺の奴たまにマフィアごっこに熱が入りすぎて、花火ぶっぱなすんだよな」