Semi Sweet・3
□恋の奇跡
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あなたが私の思いに気づいてくれた、それだけでもう奇跡に近いものを感じていたんだよ。
だから、いつかもし別れがきても私は「やっぱりね」って笑うんだ。
奇跡はそう何度も起きないことを知っているから。
恋の奇跡
雲の刻印のついたリング。
雲雀はその指輪を持つ意味については興味なさげだったけど。
指輪についての話をドアの外で聞いていた私は。
雲雀がなにかの争いごとに巻き込まれて、私とは次元の違う世界に行ってしまうんだと悟った。
思ったより驚かない。
いつかそういう日がくることを予想していた。
というより、その日が来ても取り乱したりするもんかと、自分に言い聞かせていたんだ。
そうじゃなければ雲雀恭弥の側になんていられない。
私は雲雀の手から指輪を借りると、自分の人差し指にはめて、そこに祈るような気持ちで口づけをおとした。
「何してんの?」
「おまじない、雲雀が・・・最強でありますようにって」
本当は無事に帰ってきてくれるように、なんだけど。
「僕が誰にやられるって言うの?」って不機嫌になられるも面倒だから。
雲雀は小さく笑うと、その綺麗な唇で私の名前を呼んだ。
吸い寄せられるように、ソファーに座る彼に近づく。今日は上着を脱いでるんだ。
雲雀はベスト姿もよく似合う、顔立ちがいいから何着てもカッコいいのは当然。でも色なら黒が一番合う。
何度見ても見飽きないその姿を焼き付けるように眺める、少し痩せたような気がする。
「僕もおまじないしようかな」
「えっ?」
ぐいっと、腕をひっぱられた。
バランスを崩し、雲雀の膝の上にそのまま倒れこむ。
顔が近くて恥ずかしいなんて思う間もなく、噛み付くようにキスされる。
ムードも何もない。がっついてるみたいで、歯も当たった、少し唇が切れたかもしれない。
早くなる鼓動をごまかしながら、「吃驚させないで」と照れ隠しに笑えば、なんだか真剣な、みたこともないような瞳がそこにあった。
「君が僕以外に心を許したりしないように、おまじない」
「雲雀・・・」
彼の真意が知りたくて、もう一度表情を伺おうとしたが、雲雀は舌をだして私の上唇を舐めた。
驚いて口を開けた隙に、舌が侵入してきて深いキスに変わる。こうなっては目を閉じるしかない。
舐めたり咬んだり吸われたり、他の人としたことないから比べようがないけど、雲雀はキスがすごくうまいと思う。
気持ち良さに翻弄され、酔わされながら私は雲雀についていくのが精一杯で、貪るようなその行為に息も出来ない。
こっちが苦しくなってるのがわかると、そのタイミングを計ったように開放してくれる。
「顔赤いね、もしかして息するの忘れた?」
「・・・」
いつもの雲雀。偉そうでSな雲雀様。
さっきの表情はほんの一瞬で、まるで何もなかったように雲雀は私を抱き抱える。
今のキスですべてごまかそうとしたのかもしれないけど。
(見逃さなくて良かった)
そうじゃなければ気づかなかったよ。
雲雀は言葉が少ないから、その分、表情や態度で読み取らなければ彼の本音はわからない。
曖昧で残酷な私達の関係は、私だけが雲雀を好きだという事実にいつも不安を感じていたけど、実はそうではないのかもしれない。
駄々っ子が欲しがるように、私は雲雀のシャツのそでを何時の間にか掴んで、彼の関心をひこうとする。
彼の瞳に私だけが写るように。
「何かいいたそうだね」
おまじないなんか意味ないよ。
そう言いかけてやめる。今のこの空気を壊したくない。
こうして二人で居られることが、ずっと奇跡だって思ってた。
だから別れがくるのもわかっていたし、退屈嫌いの雲雀は簡単にこの手をすり抜けて新しい世界に旅だってしまうんじゃないかって。
半分あきらめにも似た気持ちで想っていた。
それなのに、こんな時になって雲雀の本当の気持ちを知ることになるなんて。