過去拍手文

□treasure V
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『treasure V』



男の一人が夕月の腰に腕をまわし、もう片方の手で顎を掴みついと上を向かせる。

「この子よく見ると男のくせにすっげえかわいい顔してるぜー」

「やっ!やめて下さい」

そう言って男の体を突き放そうとするが、相手の方が力が強く離れられない。
助けを呼ぼうにもこの道は人通りが少なく、こちらを見る人がいても、この人達とは関わりたくないというように見て見ぬふりをして通り過ぎていく。

「そんなこと言っていいのかなー?これ、返して欲しいんじゃなかったっけ〜」

近くにいるもう一人の男がルカのネックレスを僕の目の前で外して見せてくる。

「あっ…返して下さいっ」

「だーめ。だから、俺達と遊んでくれるんなら返してあげるって〜」

「っ………」

(どうしよう…この人達に付き合えば返してくれる……でも、)

ふと、脳裏にルカがネックレスを必死に探す姿が浮かぶ。

「……わかりました。そうしたら返してくれるんですねっ」

「うん、もちろんいいよ」

そう言って男達は顔を見合わせ、ニヤニヤと笑い始める。

(こわい……でも、ルカのためなんだ)

すると、僕を拘束していた男がまた顎を掴み上を向かせてきたと思うと、いきなり男の唇が近づいてきた。
拒否したいが、そうすればネックレスがどうなるかわからない…。目をきつく閉じ、おとなしく甘受しようとしたその時、聞き馴れた声が僕を呼ぶ。

「ユキっ!!」

「ルカ…っ」

目を開くと向こうからルカが、怒りの満ちた顔でこちらに向かってくる。

「なんだぁ、テメーは」

「せっかくいいところなんだから、邪魔すんじゃねーよ」

そう言った男がもう一度唇を近づけようとした時、シュッと黒い影が見えたと思うと、次の瞬間男達二人は道の端に投げ飛ばされていた。

「いってぇ…おい、もう行こーぜ」

「ああ、ちっ、こんなもんいらねーよっ」

ネックレスを投げた後、男達は走ってどこかへ逃げていった。
急いで落ちているネックレスを拾いにいく。
多少傷がついているが、問題はないとわかると安堵のため息が自然とこぼれた。

「ユキっ、あいつらに何かされなかったか」

「うん、平気。ルカが助けに来てくれたから」

まだ恐怖の色が残った顔で微笑むと、フワリと抱きしめられ心配そうな声で言われた。

「遅いと思って後をついて行ってみれば…、どうしてあんな連中に関わったりしたんだ」

「ごめんなさい…でもどうしてもこれをルカに返したくて」

そう言うと、少し背伸びをしてルカの首にクロスのネックレスをかけてあげる。

「これは…」

「さっきの人達が持ってたみたいで…、ルカずっと探してたでしょ、だから―――」

言い終わらないうちにさっきより強く抱きしめられる。

「ユキ、ありがとう。もう決してなくさない、大事にする」

「うん…」

嬉しいさをぶつけるように強く強く抱きしめてくる腕はしばらくの間離れることはなかった。





End

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