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□君のとなりを占めるもの
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『君のとなりを占めるもの』




トタトタトタ―――

なにやら廊下を走ってこちらの部屋に向かってくる足音が自室の扉の外からすると思い、ルカは部屋の中から扉に目を向ける。


バンッ――


「ゆっきー はやくはやく!」

勢いよく開けられた扉からは人型になったソドムと、それに手を引かれる夕月が部屋へと入って来た。

「そんなに慌てると危ないよ、ソドム」

「大丈夫 大丈夫―。あ、マスター!」

「ルカ。すいません、いきなり部屋に入ってきちゃって」

「いや、いい」

申し訳なさそうにする夕月は、風呂上がりなのだろう、寝巻姿で首にはタオルをかけ、髪の毛は濡れたままにしている。

「それよりどうしたんだ、そんなに慌てて…」

「ふふふ―、ゆっきーにご本読んでもらうの―」

「うん、ソドムに絵本読んであげる約束してたから。でも、ルカの邪魔にならないかな?」

「そんなことはない、こっちこそ悪いな」

「ううん、朝陽院の子ども達にもよく読んであげてたからソドムにも、って僕が誘ったんだ」

「ゆっきー はやく―」

ルカと話をしているとソドムは待ちきれないとばかりに夕月の手を引き、ベッドに乗り上げ並んで座る。

「ごめんね、ソドム。じゃあ読むね」


夕月を取られたルカは彼の隣にぴっとりと寄り添うソドムを怪訝そうに見ると、手にドライヤーを持ち同じようにベッドに乗り上げ、夕月の後ろに腰を下ろす。

「ユキ、髪を乾かさないと風邪を引く」

「えっぁ、ありがと」

そう言って、最近使い方を知ったばかりのドライヤーで夕月の髪を慣れない手つきで乾かし、わざと音をたて邪魔するようにする。

「う゛ぅ―、マスター 聞こえないっ!」

ドライヤーの音で夕月の声が聞こえないのか、ソドムはルカの方を向き文句を言っている。

「ああ、悪かったな」

「ごめんね、ルカ。せっかく乾かしてくれてたのに…」

本を読むのを一旦中断し、ルカの方を振り向き上目で謝る夕月に、頬が緩むのが分かった。

「今度はタオルで乾かさないとな」

夕月の首にかかっているタオルを取り、まだ湿っている髪を優しく包みゆっくり拭いていく。




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