過去拍手文

□寒空の温もり
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『寒空の温もり』




「どこだろう、九十九くん」

広い競技場の中にいくつもあるテニスコートを歩き回る夕月とルカは、試合中であろう九十九の姿を探していた。



それは今朝、九十九が出て行って少し経ったころ。

九十九のテニスの試合を見に行ってほしい と十瑚がお願いしてきた。
自分はどうしても急な任務で見に行けなくなったからと夕月に相談してきたのだ。

それに夕月は快く了承し、ルカと共に今に至るわけだ。



「十瑚ちゃんにどのコートであってるのか聞いておけばよかったね、ルカ」

「ん?あぁ そうだな。それよりユキ、寒くないか?」

「うん‥ちょっと寒いけど動いてるから平気だよ」

今は11月の始め。
まだ本格的な冬ではないが、少し厚着をしないと寒いくらいだ。

その中で外を歩き回っているため外気に触れる部分は冷たくなってしまっているだろうと思い、ルカは隣を歩く夕月の手を握ろうと試みたがそれは何かを見つけたような彼の声によって遮られた。

「あっ、九十九くんだ。やっぱりもう試合始まってるみたい。早く行こ、ルカ」

離れていく手に、内心舌打ちながらもルカは前を行く夕月の背中を追う。


九十九が試合をしているコートのフェンスの周りには女子高生が多く集まっており、黄色い歓声があがっている。

その中を掻き分け、ルカと見える位置に立ちラケットを振る九十九を応援していると、チラとこちらに気づいた彼はニコリと笑いかけてきた。


休憩時間に入った途端、九十九は夕月達のもとへ駆け寄って来ると、笑顔を浮かべていた。



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