過去拍手文
□sweet whip
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『sweet whip』
「っと、出来た」
さっきまで掻き混ぜていた生クリームの入ったボールをテーブルに置き、ふぅと動かし続けていた腕を休めるように夕月は一つ息をついた。
もうすぐクリスマスということもあり、今日はケーキ作りの練習を黄昏館のキッチンを使って遠間さんに教わった手順通り一人でしていた。
日々お世話になってばかりのみんなに何かしようと考えついたのがこのクリスマスケーキ作りだ。
だけど初めて作るというのもあってなかなかスムーズにいかないのもあり、今はやっと仕上げの生クリームを作り上げたというとこだ。
あとはそれをスポンジに塗ってイチゴを乗せれば完成、と出来上がったケーキの姿を思い浮かべてまた作業に取り掛かり始める。
「ふふ、出来上がったらルカに味見してもらおう」
今は戒めの手のみんなは任務に行っており、遠間さんや綾さんは買い出しなどでおらず、黄昏館には僕とルカしかいない。
(あっ、ルカって甘いもの平気かなぁ…)
そんなことを思いつつも、出来上がったものを一番に食べてもらいたいという気持ちを抱き、つい頬が緩んでしまう。
生クリームの入ったボールを持ち上げ、一旦冷蔵庫に入れようと歩いたとき、目の前をひらひらと小さな蝶が通り過ぎる。
今の時期に珍しいな、と目で追っていると、ドタドタと何かが蝶を追いかけてくるようにキッチンへと入ってきた。
勢いよくこちらめがけて走ってきた黒い物体は蝶に気をとられているらしく、夕月と正面からぶつかった。
「うわっ――――ッ!」
夕月の手からはぶつかった拍子に生クリーム入りのボールが離れスローモーションのようにそれは宙を舞い、床に倒れている夕月めがけて音をたて落下した。
「っ――ぃたたた… ソドム?!」
体をおこし、何が起こったのかと目を開くとそこには犬型になったソドムがおり、ぶつかってきた物体の正体が分かった。
ごめんなさい とでも言うように鳴くソドムの頭を撫で、大丈夫だよ と言うとペロリと僕の頬を舐めてきた。
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