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□不器用な君
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気づけば俺は夕月を怒鳴っていた。
それは今日学校で、体育前の更衣時間でのこと。
夕月と同じクラスである焔椎真はいつものように体操服へと着替えていると、なにやら一部の男子生徒達のニヤニヤとした顔が目に入った。
(なんだ…?)
不審に思いながらその男子生徒の視線の先に目をやると、そこには肌をあらわにし更衣をしている夕月の姿があった。
「やっぱ祗王って男のクセに肌白いしキレーだよなぁ」
「それに華奢な体してるし、言うことねーよ」
などという会話が耳に入ってくるも、夕月は全くといっていいほどに自分がそういう目で見られていることに気づきもしない。
(チッ、あいつって奴はいつもいつもっ… どこまで鈍ってやがんだ)
苛立ちながらも、夕月への好奇な視線にいたたまれない焔椎真は男子生徒達へと近づいていた。
「おいっ、着替えたんならさっさと授業に行けっ」
「ひいっ、れ、蓮城!今から行くとこだよなっ、なっ」
慌てて教室から走って出ていく様子を見てまたもや大きく舌打ちをし、夕月の方へと足を進める。
「あれ、焔椎真くん、どうしたんですか?」
「別に。おら、さっさと行くぞ…」
いつもと違う様子の焔椎真に戸惑いつつも、夕月は先を行く彼の後を追いかける。
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黄昏館に着くなり焔椎真は夕月を強引に自室に引っ張りこんだ。
「!?…あの焔椎真くん?どうしたんですか、なんか今日は変です…それに――」
「お前はっ」
「え…」
「お前はいっつも無防備すぎんだよっ」
突然声を荒らげた焔椎真に夕月はビクッと肩を揺らす。
「そのせいで俺がどんだけ苦労してると思ってんだ、今日だって―」
てっきり怒鳴られて落ち込んでしまっているかと夕月を見ると、その顔はいつもの笑みをうかべていた。
「なっ!なに笑ってんだよ、こっちはマジで怒って――」
「すいません、やっぱり焔椎真くんは優しいなぁと思って」
「はぁ?!俺のどこが優しいんだよ」
「優しいですよ。僕のこといつも気にかけてくれてるみたいだし、こうやって怒ってくれる。それだけでも僕にとっては十分な優しさです」
嬉しいです と屈託のない笑顔でそう言われれば、いつの間にかさっきまでの腹立たしさなどどこかへ消えてしまっていた。
(あぁ、ほんとにこいつは、)
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「んンっ……」
「夕月…」
「んあ、はぁ、はっ‥ほつ、まくんっ…」
唐突に唇を塞がれた夕月は、甘い感覚が全身に広がっていくころにはベッドの上に引き倒されていた。
「夕月、いい…よな、?」
「う、うん///」
一応了解をとって、纏わり付く服をゆっくりと剥ぎ取っていくと顔を真っ赤に染め、フルフルと目をそらす夕月に脱がす手が早まる。
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