Novel★short
□rainy trouble
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今は人間界では梅雨という時期らしい。
確かにこの頃はやたらと雨が多い。
そろそろ夕月の下校時間だ。
今日は歩いて迎えに行く。
この前 車に乗って校門で夕月を待っていたらかなり目立っていた と夕月が言っていたのを思い出したからだ。
黄昏館を出たときにトオマが何か言っていたような気がしたが…気のせいか。
いつものように門のところで待っていると、愛しい人の声が聞こえた。
「ルカ―」
夕月がこっちへ駆け寄ってくる。
「すみません、遅くなっちゃいました」
「いや、大丈夫だ。行こう」
「はい」
そう言い、夕月と並んで歩き始める。
「今日は、車じゃないんですね」
「ん、ああ。嫌…だったか?」
「いえ、たまにはこういうのもいいですね。ルカと話しながら帰れて嬉しいです」
と ちょっと照れた顔で言う夕月に、内心ドキっとした。
「でも、なんだか雨降ってきそうですね。傘忘れたから降らないならいいですけど…」
「そうだな」
そう言っている間にもポツリポツリとしてきたと思ったら、大雨が降ってきた。
「わわっ、降ってきちゃいましたねっ」
「走ろう、ユキ。濡れる」
と言い 屋根のあるところまで走る。
「はぁ はぁ」
「大丈夫か、ユキ」
「はぁ はい。でもずぶ濡れになっちゃいましたね」
「そうだな」
ふと、黄昏館を出た時に聞こえたトオマの声を思い出した。 確か、傘を持っていくようにと言っていた気がする……。
しまった…ちゃんと聞いていれば今頃ユキは濡れずに済んだのにと、自分の不甲斐なさに落ち込む。夕月のほうを見ると空を見上げて雨が止むのを待っている。
「すまない、ユキ。傘を忘れたばっかりに…」
「え、いや いいんですよ、ルカのせいじやありませんから。僕の方こそ傘忘れて行ったんで」
気にしないでと言う夕月に少しホッとしたとき、俺の目が一点に集中した。
夕月の濡れたシャツからピンク色の可愛らしい乳首が透けてくっきり見えている。
どうしたものかと内心焦っていると、
「ルカ?どうかしましたか」
夕月の声にハッとする。
「いや、その…なんだ……」
一度意識してしまうとそこばかりに目がいく。
夕月はそのことに気付いていないみたいだ。
「?」
首を傾げてこちらを見ている夕月。
そうしているといつの間にか雨が止んでいた。
「あ、雨止みましたね。よかったです」
「あ、ああ そうみたいだな」
じゃあ行きましょうかと言う夕月に咄嗟に自分が着ていた上着を掛けた。
「ル、ルカ?」
「いや、あれだ 冷えるだろ、着てろ」
夕月を好奇の視線にさらすわけにはいかない。
「はい、ありがとうございます」
そう言った夕月の頭を撫で、また歩き始めた。
梅雨というのも悪くない。
end
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続→under『nursing』
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