Novel★short
□yuki
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夕月はまた俺を受け入れてくれるだろうか…
『yuki』
時を越え、彼女はまた俺の前に現れた。
いや、彼女といっていいのかはわからない。
性別も持って生まれた記憶さえも、違うのだから。
だが、出逢った瞬間に感じたものは『ユキ』そのもので、また巡り会えたのだと思った。
一緒に生活をしていると、夕月がたまに見せる仕草や行動が『ユキ』と重なってみえるときがある。
そんなときは必ず夕月のそばから離れ、頭を冷やす。
ほら、また…。
夕月が寝癖がなおらないと髪をいじり、困った顔をする。
俺は静かに部屋をあとにした。
□
「まって、ルカ」
今日もまたそっと部屋から出て廊下を歩いていると、後ろから夕月が追いかけてきた。
こんなことは初めてで、足を止め振り返る。
「あの、どうして僕をさける時があるんですか…」
息を整えながら夕月はまっすぐに俺を見た。
やはりな…
最近になって俺が夕月から離れる時に、夕月は不安げな表情をみせるようになり、いつかは聞かれると思っていた。
「そんなつもりはない。不快にさせて悪かった」
「…ルカは、僕が嫌いですか」
俺の言葉のあとに一時の間をあけて、夕月は震える声で言った。
「そうじゃない…心配するな」
「っ、でも」
何か言おうとした夕月にまた背を向けその場をあとにする。
「ルカ…」
微かに呼ばれた名が暗い廊下に木霊した。
(違うんだよ、夕月。俺はまた失うのがこわいだけなんだ…)
愛してしまったお前を。
また…。