MH
□師弟関係
1ページ/4ページ
「出来た…!!」
目の前に置かれた真新しい武器を眺め、キオは思わず笑みを零した。
「やっと…やっと完成したんだ」
『出来た』、と言っても作ってくれたのはおばあちゃんだが…其れは今は置いておく事にする。
「これでアイツに借りが返せる」
そう呟き、満足気に細められた目を窓の外――海の方へ向ける。
「丁度明日から一週間も休暇を貰えたし…そろそろ会いに行っても良い頃だろ」
言うが早いか、キオは軽い旅支度を整え始める。
「アイツ…これ見たら、どんな顔するかな」
知らず呟いたその横顔は、心無しか嬉しそうにも見えた。
▲▽▲▽▲
次の日。キオの姿はジャンボ村ではなく、ドンドルマに在った。
「前に会いに来た時にはまだ帰って来て無かったけど…今は居るかな…」
その背にはいつもの片手剣だけでなく、何故かヘビィボウガン――イャンクック砲までもが背負われている。
「よし…待ってろよ、クルトアイズ!!」
そう――今回キオは、五年前に師であるクルトアイズに助けられた借りを返すため、ドンドルマを訪れたのだ。
本当ならばあの後直ぐにでも完成させて返しに行きたいところだったのだが
存外に素材を集めるのが難しかった上に他の依頼で忙しかった事も有り、五年も先延ばしになってしまった。
「取り敢えず、酒場にでも行ってみるか」
そう思い立ったキオは、手始めに街一番の酒場へと歩き出した。
.
▲▽▲▽▲
ドンドルマの街の酒場は、今日も相変わらず多くのハンター達で賑わっていた。
キオは早速その中に見慣れた長髪が居ないかと首を巡らせるが、生憎と長髪は見当たらない。
「仕方無いな…他を当たるか」
しかし次の酒場にも、その次の酒場にも、更には武具屋にも、探し人の姿を見つける事は出来なかった。
「ったく…何処に居るんだよ、あの長髪ハゲ!!」
髪が有るのか無いのか良く解らない悪態を吐く。ただ、言葉とは裏腹に、その顔には微かな笑みが浮かんでいたのだが。
気付けば大分日も傾きつつあった。
「もうこんな時間か…」
そろそろ宿を取りに行かなければ、運が悪ければ何処も満室になってしまう。
「次の店にも居なかったら、今日はもう諦めよう」
そう心に決めたキオは、目の前の小さな酒場へと入って行った。
▲▽▲▽▲
案外客の多いその店は、それなりの賑わいを見せていた。
近くのテーブルから漂ってくる料理の香りに空腹感を覚えながら、狭い店内を見渡す。
「長髪、長髪……ん?」
と、キオは長髪の代わりに、あるテーブルの上に置かれた武器に目を奪われた。
「あ、あれは…超イャンクック砲…!?」
それは、キオの背負っているイャンクック砲を更に強化させた、超イャンクック砲と呼ばれるヘビィボウガンだった。
(ま…まさか…あれの持ち主って…)
嫌な予感に襲われたキオは、恐る恐るそのテーブルの周辺に目を走らせる。
「……あ………」
そして、見つけてしまった。
懐かしい、師匠の顔を。