TRIGUN
□Cantarella
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僕の全てはナイブズ様に捧げた。
そう思っていたのに……
●○●○●
初めてその男と接触した時は何も感じなかった。
あの方と同じ種の筈なのに愚かな人間と関わり共に生きようとする存在。
一度目にしたきり姿は見なかったが、僕の行動に反応するその気配には随分楽しませてもらった記憶がある。
始末されたモネヴを発見し、彼がどう出るか見ていた僕の髪を撃ち抜いた弾丸に込められていたのは、僕に対する怒り。
あまりに純粋なその感情に笑いが込み上げてきた。
ナイブス様の命令を遂行しようと刺客を送り彼がそれを退ける度、彼への興味はより一層深いものになっていった。
ジェネオラ・ロックでの暴走で消息を絶ってから二年間の空白の後、龍津城砦で久々に目にした彼と彼の中に眠る滅びの翼。
正常な意識を保っていないにも関わらず、自らを殺そうとしていた者達さえ守ろうと自己防衛から来る力を抑える
醜くも美しいその姿に魅了されると同時に、自分の四肢が動かせない事を歯痒く思った。
破壊のために行使されるべき力をも護るために使い、化け物と呼ばれ命を狙われても尚人間と関わる。
方舟の鉄棺の中で技を磨きながら、笑顔の絶えることのないその顔に絶望の色を浮かべることだけを想い続けた。
そして今、僕に銃口を突き付けている彼の顔
は僕が望んだ通りの表情を浮かべていた。
自らに刻んだ使命と僕への憎しみの狭間で揺れる心が手に取るようにわかる。
恐らくこのままの状態が続けば彼は不殺の信念を優先し僕を生かそうとするのは火を見るより明らかだ。
だが、そんな結果は許さない。
僕が彼の中で、殺さずにいた人間の一人になるなど耐えられない。
ナイブズ様のために僕は彼と対峙し、僕自身の為に彼は僕を殺す。
彼に殺されその心に消えない傷となって残ることで、僕は彼の中で永遠に生き続けることになる。
せっかくここまで追い詰めたんだ、これ位の置き土産はしておきたい。
既に糸を使って餌は捕えた。
相棒とも言うべきチャペルの忘れ形見を人質に取られては彼も僕を殺さざるおえないだろう。
唯一の心残りは僕を殺した後の彼を見れないことだが………それは本当に残念だ。
……ああ、ダブルファングが到着したようだね。
さあヴァッシュ・ザ・スタンピード、君はこれを見てまで僕を生かそうとは思わないだろう?
だから早く…
僕を………
〈了〉
やっと更新できました…
カンタレラって、量によって即効性にも遅効性にもなる毒らしいですね。
同じものなのに全く違う効き方をするあたりプラント兄弟っぽいなと……
コミック内で「ジュネオラ・ロック」と「ジェネオラ・ロック」ってコロコロ綴り変わっててどっちにすればいいのやら……