TRIGUN
□金色ワカメの襲来
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「これ、闇鍋っていうんですぅ」
「私が聞きたいのはこれが何かということではなく、なぜこれを選んだのかということですわ」
ミリィの能天気さに、メリルは眉間を押さえた。
「だって、ヴァッシュさんってすぐトラブルに巻き込まれるじゃないですか
だから、何もない今のうちにパァーっとやっておこうと思ってジョンソンさんに聞いたらこれが一番楽しめるって」
「ちょっとお待ちなさい。ジョンソンさんって誰ですの?」
「酒場の店主さんです」
どうやら昼間ミリィが酒場の前で話し込んでいたのはこのためだったらしい。
「保険屋さん……」
ヴァッシュは、自分の向かいに座るミリィの言葉に目を潤ませる。
(僕のためにこんなことをしてくれるなん
て……感動‼…)
「せやけど、いくら闇鍋言うたって、流石に姉ちゃん達のそれ入れるわけにはいかんやろ」
ウルフウッドは、保険屋の二人が持ってきたバナナサンデーとミルフィーユに視線を向けた。
「そうだね、なんでも入れられるっていっても限度はあるからね」
「えぇー。せっかく持ってきたんですよぅ、入れましょうよぉ〜」
「仕方ないですわよミリィ、これは食後に食べることにしましょう」
唇を尖らせる後輩をなんとか諭し、メリルは甘味投入を思い止まらせる。
「でもっ、ヴァッシュさんと牧師さんのは入れてもらいますぅ‼」
絶対に譲らないと言うかのように、ミリィはビシッと二人の持つものを指差す。
「ドーナツとうどんですか。まぁ、それくらいなら問題は無いと思いますわ」
「せやな、入れたところで大して味も変わらへんやろうし、ええんやないか」
「えー!この可愛いドーナツ君たちを入れるなんて僕はやだよ」
三人の言葉に、ドーナツ好きのヴァッシュは猛烈に抗議する。
「せやったら、半分残して、もう半分入れる
ってのはどうや?」
「うーん…それなら、まあ…」
「決まりやな」
渋りまくるヴァッシュをなんとか言いくるめ、ウルフウッドは自らのうどんと共にドーナツを鍋に投入した。
●○●○●
「そろそろ良いんじゃないかい?」
全ての材料を入れ鍋の湯が再び沸騰したところで、ヴァッシュが口を開く。
「おっ、もう良えで…以外と旨いわこれ」
汁を飲んだウルフウッドが少し驚いたように感想を漏らす。
「じゃあルールの確認ですね。全員で一斉に 箸を入れて、掴んだものを取り出して下さい。
食べ物なら当たり、それ以外のものを掴んだ方ははずれです
因みに、革靴は煮ると食べられるってひい爺ちゃんが言ってたのでセーフになりますよぉ。あと、取った食べ物はちゃんと食べてくださいね!」
ミリィの言葉に頷き全員が鍋に箸を入れる。
「それでは皆さんいきますよぉ…せーの」
箸を上げた瞬間、ざばぁという音と共に、ミリィの箸が金色の物体を掴み出した。
(あらら、たわしがくっついて来ちゃいました)
(おかしいですわね、金色のワカメなんて入っていたかしら?)
(モッサリしとるなぁ。アレ、食えるもんに入るんか?)
(うわぁ。あんな大きいワカメどうやって鍋に入ってたんだろう?)
「先輩っ!!これっ、動きましたっっ!!」
「えっ?」
ミリィの言葉と共に、彼女の箸に絡みついていたワカメもどきがゆっくりと持ち上がる。
その下に隠れていたものと目が合った瞬間、ヴァッシュは全身の筋肉がビキィッと音をたてて硬直するのを感じた。
なぜならそれは…その顔は……
「…うっぷ‼」
「ヴァァアアア〜〜ッシュウウウウ〜〜〜」
そのワカメ…もといナイブズがヴァッシュに飛び付いたのは
彼の正体に気がついたウルフウッドが生理的嫌悪から来る吐き気に負け、口を押さえてトイレに駆け込むのとほぼ同時だった。
「………ぎ…ぎゃああああぁぁあああーーッ‼‼」
ナイブズに抱き付かれてから数秒の沈黙の後、ヴァッシュの口から放たれたのは近所迷惑を全くかえりみない大音量の叫び声。
「ヴァッシュウウ〜ずっと会いたかったぞぉぉ」
「ナッ…ナ、ナナナナイブズ!?おまっ、服着ろよ‼」
「ヴァッシュさん、服を着る着ない以前の問題でしてよ」
自らが追っている筈の兄の出現、そしてその兄に素っ裸で抱きつかれているというトンデモない事態に混乱したヴァッシュの頭は
これ以上の混乱を避けるため現実からの逃避行動を開始した。
「何を言っている、こんなところで服など着てみろ、体に張り付いて身動きとれなくなるじゃないか」
「ああ、それもそうだね………じゃない!そうじゃなくて!何でお前がここにいるんだよお前が出てくんのまだまだ先だろ!」
ナイブズはヴァッシュの抗議をふっと鼻で流す。
「本編と全く関係の無い話だ、俺が出てくるぐらい全くと言って良い程問題は無い」
「な、無くなぁーい‼」
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