TRIGUN
□喰
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「なあ。もし、今ここで僕が死んだらどうする?」
ふと、そんな疑問が口をつく。
下を向いた視線の先にあるのは空になった数本の酒瓶と手に持っている半分以上中身の減ったグラス。
「…………」
ユラユラと揺れる液体を理由もなく眺めながら待つが
月明かりに照らされたテーブルの反対側でグラスを傾けているだろう男から返事は返ってこない。
酒が入りすぎた時の一種の癖みたいなものだから、元より彼に答えを期待してはいなかった。
「…ワイなら」
「……え?」
返事が返ってきたことに驚き顔を上げた瞬間……
「……………ぁ………」
暗闇で輝くその瞳に吸い込まれるような感覚を覚えた。
「ワイなら、死んだオドレんこと喰ろうてしまうわ」
瞳の底から浮かんでくるのは、人生の半分も生きていない人間が発するには余りにも深すぎる
狂気
「……喰……らう………」
声が、掠れる。
うっすらと笑みの浮かぶウルフウッドの口が開いた。
「せや。髪の毛一本血一滴残さず全部ワイん体内(なか)に取り込んだる
ホンマに大事なモンは手放したらアカンさかいな」
空になっているグラスをコトリとテーブルに置き、その手で腹の辺りを軽く撫でる。
家族同士が同じ墓に入れるかさえ分からないこの土地で本当に大切なものと共にいるための手段。
そこにあったのは、狂おしい程の執着心だった。
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