イナズマ

□憂鬱
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いつも笑顔、嫌味を言わない、悪態をつかない、優しい、愛想がいい、
他にもたくさん、俺は持ち合わせていないあいつの
『良いところ』
そんなんだから、モテるんだよな・・・

いい加減、その笑顔を俺だけに向けてほしい・・・

なんてな。






今日も、いつもの様に源田と一緒に学校まで行く。まあ、付き合っているからそれくらいは当たり前だろう。
でも、あいつはいつも何だかぎこちなくて、あまり『恋人』という実感がわかない。
そのくせ、変な所(昼飯を一緒に食べようだとか(元より俺の昼飯はこいつが作っている)、朝は一緒に行く!帰りも一緒に帰る!だとか、その他いろいろ・・)でムキになる。
そんな源田も好きだからまあいいけど・・・

そうして、いつもの様に学校に着いた。
俺と源田は、クラスが同じなので教室まで一緒に行く事にしている。まあ教室に着いても朝休み、10分休憩、昼休みの間はずっと一緒にいるけど・・・
といっても、源田の話す事は本当にどうでもいいことばっかりだ。
「佐久間、今日の弁当はオムライスだぞ!」
とか。
でも、そんな『当たり前』の会話は俺にとって『当たり前』ではなかったから、脇をくすぐられたみたいに、どこかくすぐったかった。
「はいはい、いつもごくろーさん」
なんて、素直じゃない返事しか返せない自分が恨めしい・・・
何で、もっと素直になれない!?なんて思うだけ無駄で、結局俺はそういう返事をして、こいつに構ってもらいたい、と心のどこかで思っているんだろう。

「(俺って相当、嫌な奴・・・)」

自己嫌悪なんて、嫌というほどしてきた。
でもやっぱり、それでもまだしたりないのだろうな・・・。
『佐久間!』
あいつがそうやって、いつも俺の事を一番に考えてくれるのは正直嬉しい。でも、それを素直に喜べない自分がやっぱり恨めしい。いい加減、源田がどこかへ行ってしまうんじゃないのか!?なんて思うけど、やっぱり素直になれない。どうしたら良いのか・・・

昼休み、いつもの様に源田が来るのをぼーっと待っていた。でも、いつまでたってもあいつはやって来ない。別に俺としては、その方が静かになるしいいけど、俺の弁当は源田が持っているという事から、いつまでも黙って待っているわけにはいかない。少々めんどくさいけど、源田を探しに渋々と席を立つ。

「めんどくさ・・・・」

呟く言葉は嘘の塊、本当は早く会いたい。
一緒に弁当を食べたい。

なんて、素直に口に出来る訳もなくて、源田を見つけたら「俺を待たせるなんて、良い度胸だな?」なんて心にもない事を口にする。本当は違うんだ、気付いてほしい。これも、言えない。

案の定、源田はすぐに見つかった。
中庭で、クラスメイトの女子どもに囲まれて一緒に昼飯を食べていた。
源田はモテるから、きっと無理矢理誘われたんだと思う。でもやっぱり、恋人なんだから、俺と一緒に食べてほしかった。って、なに女々しい事言ってんだよ、俺は・・・。まるで、嫉妬してるみたいじゃねぇか・・・
でも、そうなのかもしれない。
実際、優しい源田の事だから誘いを断れなかったのだとは思うけど、俺を放っておいて女子と飯を食ってるだなんて、本当は悲しかった。
作ってるだけかもしれないその笑顔も、本当は俺だけに向けてほしい。

「(っ!何だよ!楽しそうに笑って・・・!)・・・もういいや、咲山たちのとこ行こう・・・」

そう呟いた時、窓から源田を見ていた俺と、中庭で飯を食っていた源田との目が合った。
源田は、少し焦ったような、申し訳なさそうな目をしていた。
「(そんな顔するなら、初めからそんなことするなよ!)」
そう思ったけど、やっぱり気まずかったから俺は反射的に走り出した。つまり、逃げた。途中、『佐久間!』なんて俺を呼ぶ声が聞こえたけど、気にしないで走った。周りには目もくれず。
そうして走っていると、疲れてきたからいつもの部屋・・・俺と源田しか知らない、ぼろぼろで今にも崩れてしまいそうな部屋。そこに入る。
鍵がかかっているはずだったけど、今日は何故か鍵が開いていた。

「・・・・・・?誰か、居るのか・・・・?」
不意にそう尋ねても、返事は返って来ないから、この前たまたま鍵をかけ忘れたんだな、と思い中に入った。

後悔した

「っ!なんで!」

今、おそらく一番顔を合せたくないはずの相手、つまりは源田が居た。

「・・・・・・ごめん、佐久間」
「何、が・・・・・・・」
「さっきの、昼飯の事。一緒に食べれなくて」

一応、気にしてたんだ・・・

「別に、一緒に食べなきゃいけないって言うルールなんてないし、お前楽しそうだったじゃん」

「・・・・・?妬いてるのか?」

「ばっ!違う!自惚れるな!」
素直に、なれない。。。。

「・・・・・俺は、嫌だった。佐久間以外の奴と飯を食うのは」

うらやましい、自分の気持ちを素直に言えるお前が

「・・・・・・・俺は別に・・「佐久間」
また、思ってもない事を言おうとした。
そんな俺の口を押さえて、源田は

「俺は、佐久間が好きだ、愛してる。俺が好きなのは、他の誰でもない、佐久間だけだ」
なんて、酷く恥ずかしいような事をサラッと言う。

「っ!馬鹿やろう!なに恥ずかしい事言ってんだよ!死ね!馬鹿!」

「佐久間、照れてるのか?」

「っ!そうだよ、馬鹿野郎!誰のせいだとおもってんだ?」

「俺」

「っ〜〜〜〜〜〜!死ね!」

「素直じゃないんだな」

誰のせいだと思もってる?

それも、俺か?

当たり前。

しばらく、そんなやりとりをしていたら、源田が急に真剣な顔になって言った。

「佐久間、愛してる」
「・・・・・・・・俺も、愛してる」

そうやって、3秒ほどの短いキス。

何すんだよ馬鹿野郎!
何て、今度は言えなかった




憂鬱

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