夢物語

□−それが運命
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きっかけ−



あの日、声を聞いた。

ほんの微かな、耳鳴りのようなものだったが、何故か強い存在が自分を呼んでいるのだと妙に確信が持てた。

何処に行って、何をするつもりなのか。何が待っているのかなんて、何も解らない。でも、アタシの足は迷うことなく何処かも知らないであろう場所を真っすぐ目指しているように動いていた。


辿りついたらきっと何か大きなものが変わる気がする。それが良い事か悪い事なのか、偶然なのか抗えない必然なのかは知りようもない。此処で踏み止まって引き返せば、まだ何かに間に合うかもしれない。それでも、アタシの身体は、魂は、何かを強く求めているようだった。


別に自分に嫌悪したことも、不幸だと不満を抱いていたわけでもない。それでも本当に欲しいものが決定的に足りないような、満たされていないような虚しさは確かにあった。そしてアタシはずっとその何かを必至で探していて、それほど変わりたかったのかもしれない。

今にして思えば、ずっと心の奥底で燻っていたその気持ちと、こうして真っ正面から向き合うことになるくらいにその焔は、もう自分を誤魔化せないほど大きく膨れ上がっていたんだろう。

だから、今のアタシがこうして此処にいるんだ。
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