山獄小説

□ちょこっとLOVE
2ページ/11ページ

転校してきたばかりの頃、偶然見つけた古い教会。
その中にあったグランドピアノを見たとき、何故か唐突に弾いてみたくなった。

本来立入禁止のそこに入ることが出来たのは、雲雀が獄寺のピアノを気に入ったからに他ならない。


母親以外でピアノを褒めてくれたのは、雲雀とあの男だけだった。


・・・だから気になるのかもしれない。
そう思って、ぼんやりとしていたときだった。


「山本武、並盛中学1年A組出席番号17番。
4月24日生まれO型。身長177cm、体重63kg。
寿司屋を経営する父親との2人暮らし」
「恭弥?」

いきなり現れ、手元の書類を見ながら読み上げていくのは、彼についてのデータ。
突然のことで、獄寺の思考が付いていかない。

「野球部に所属し、その運動神経と野球センスの良さから1年生ながらレギュラー入り。
但し、成績の方には問題が有り、補習常習者のおちこぼれ。
温厚で明るい性格から生徒、先生共に受けが良く、特にそのルックスから女生徒の人気は絶大。
所謂、八方美人タイプだね。こんなの選んだら苦労するんじゃない?」
「・・・誰も選ぶなんて言ってないだろ?」
「お望みなら、テストの成績から過去の女性関係まで調べてあげるけど?」
「望まねぇよっ!ってか、一体何なんだよ。お前がそんなこと」
「最近、君のピアノの音が変わってきたからちょっと気になってね」
「・・・」

ピアノというのは酷く正直で、その時の感情がまともに音に出る。
あんな奴に振り回されているなんて考えたくないけれど。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ