山獄小説
□ちょこっとLOVE
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幼い頃から、沢田の右腕になることだけを目標に育てられた。
中学生になったとき、どんな人物かを確かめるために来日した。
余りにも頼りないその風貌に失望し勝負を仕掛けた自分を、沢田は命と共に心まで救ってくれた。
その彼のためなら何だって出来る。
自分のすべては、沢田のために。
そう思って今日まで生きてきた。
なのに、あろう事か他の人間に心を奪われ始めている。
・・・沢田は、そんな獄寺を見て喜んでくれたけれど。
「俺が獄寺君を助けたのは本当に偶然だし。
獄寺君は、獄寺君の人生を歩んでくれた方が俺は嬉しい。
君の人生が俺の為なんて、俺にとっては重すぎるよ」
そう言って、にっこりと笑ってくれた沢田は、今でも尊敬している相手なのだけれど。
「女らしさ・・・か」
自分には、一番必要のない物だと思っていた。
でも、彼が喜んでくれるなら・・・
それに何より、彼に群がる女達に負けたくない。
おかしな所で負けず嫌いが顔を出した獄寺は、一大決心をして彼の家へと赴いた。
「よぅ、いらっしゃい!隼人ちゃん。武ならまだ帰っていないぜ?」
「い、いえ。あの・・・叔父さんにお願いがあって来たんですけど」
「俺にかい?出来ることなら何でも聞くぜ。一体何だい?」
「実は・・・」
とりあえずここから始めることにした。