山獄小説
□ちょこっとLOVE
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「あれ?親父、弁当は?」
久しぶりの練習試合。
午前中で終わるだろうが、その後でミーティングがある。
そのため頼んで置いた筈の弁当が見あたらない。
「すまねぇな、うっかりしてたんだ。後で届けてやるよ」
「しょーがねぇな」
仕方なく、水筒だけ持って出掛けることにした。
未だ片思いの可愛い人は、今日は見に来てくれるだろうか。
しかし、何だかんだ文句を言いながらも誘えば来てくれるようになってきた。
「もう少し・・・」
あの風貌からは想像付かないが、どうやら彼女は恋愛慣れしていないらしい。
下手に急けば、きっと逃げ出してしまうに違いない。
少しずつ少しずつ。距離を縮めて行けばいい。
諦めるつもりは全くないのだ。
試合に勝って、お祝いと称してまた自宅に誘おうか。
そんなことを考えながら学校へ向かった。
その頃。
「おはようございます。すみません、無理なお願いしちゃって」
「いやいや、俺としては嬉しい限りだ。じゃ、早速始めるか」
「はいっ」
竹寿司では個人授業が行われていた。