山獄小説
□真夏の夜の夢
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久しぶりの休みは、家にいるには余りにも勿体ないほどのいい天気だ。
俺は近くの公園に出掛けることにした。
「たけしーっ」
元気良く手を振りながら走ってくるのは、誰よりも愛しかったアイツそっくりの女の子。
「よぉ瑠璃、久しぶりだな。今日はママと一緒じゃないのか?」
体当たりでもするかのようにぶつかってきた身体を抱き上げる。
「一緒。もうすぐ来ると思うよ。
ねぇ武、キャッチボールしよ?」
そう言って差し出された懐かしいグローブとボール。
「随分用意が良いんだな」
「パパがね、今日は武お休みだって教えてくれたの。ねぇ、いいでしょ?」
そう言って上目遣いで少し首を傾げるように強請られる。
そんなところもアイツそっくりで。
そう言えば、俺は昔からアイツのそんな仕草に弱かった。
「もちろん」
そう言ってやると、それはそれは嬉しそうに笑った。
・・昔のアイツはそんな風には笑ってくれなかったな。
アイツのそんな顔を見られたのは只一人。
アイツがずっと慕っていた俺の親友。