思いつくままの妄想小説
□学園ハニー 6
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そして、バレンタイン当日。
水曜日である今日は、確か早めに部活が終わると言っていた。
彼のことだ。
おそらく大勢の女の子にチョコレートを渡されるに違いない。
それを想像すると、胸の辺りがムカムカしてくる。
その理由に心当たりはあったモノの、なるべく考えないようにして山本の家に向かった。
店は開いているが、客が来るのには少々早い時間。
恐らく山本もそろそろ帰ってくるだろう。
「こんにちわー」
「へい!らっしゃい」
思い切って引き戸を開けると、父親であるつよしが、カウンターから元気良く声をかけてきた。
「おや隼人ちゃん、いらっしゃい。武の奴ならもうすぐ帰ってくると思うけど、何か用かい?」
そういいながら奥のカウンター席を進めてくれた。
「いえ。あの、待たせて貰っても良いですか?」
イスに腰掛けながら獄寺がそういったとたん
「ただいまー!オヤジ、コレ今日の戦利ひ・・・」
紙袋3つに一杯のチョコレートを持って帰って来た山本は、獄寺の姿を見て慌てて袋を後ろ手に隠す。
しかし、当然誤魔化しきれるわけはなく。
彼女から漂ってくる冷たい空気に、嫌な汗が流れて来るのを感じた。
「あ、あれ?獄寺来てたんだ」
「・・・悪かったな」
「おかえり、武。今年はまた、随分貰ったんだな」
「あ、あぁ。先輩とか、クラスの子とか。友チョコって流行ってるみたいだし」
『友チョコ』という所を態と強調して、答えた。
しかし、貰ったチョコは明らかに、義理や友達に渡すレベルのモノではない。
ちらりと彼女の方を見てみれば、不機嫌そうに睨んで来ていた。