思いつくままの妄想小説2
□そして僕は途方にくれる
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「野球馬鹿」
いつからか、隼人は俺のことをこう呼ぶようになった。
確かに俺の頭の中は野球ばかりで。
隼人にそう言われるのも無理はないかなって思っていた。
彼女がその言葉に何を秘めていたのか、その時の俺は全く気づきもしなかったんだ・・・
***
「え?またダメ?」
3年に進級し、中学最後の大会に向けて練習三昧の日々。
平日はもちろん、土日も殆ど練習や試合で潰れていた。
「ごめんっ!ほんっとごめん!!」
俺は土下座せんばかりに頭を下げた。
隼人の瞳の中の酷く哀しげな光に気付いたから。
最後にデートしたのは一体いつだっただろうか。
明後日の日曜日は、隼人が見たいと言っていた映画に行くはずだった。
前売りまで買って、すっごい楽しみにしていたはずの・・・
なのに、ドタキャンするのは今回で何回目になるだろう。
「・・・土曜日試合だから、日曜の練習は午前中で終わるって言ってなかったっけ」
「それがさ、コーチが事故っちゃったんだ。練習後にみんなでお見舞い行くことになって」
「え?大丈夫なのか?!」
「詳しいことは分からないけど、大したことはないって言ってた」
「そっか・・・そういうことじゃ仕方ないな」
「ゴメンな、来週は絶対大丈夫だから」
「ホントかよ。約束だからな」
そう言って笑ってくれた隼人に内心ホッとした。
瞳の中の光がいつもに戻っていたから。
義理堅い隼人のことだから大丈夫だとは思ったけど。
やはり哀しませるのは、俺としてもツライ。