紫眼の薬師

□拾いモノ
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──朝、外に出てみると死体が転がっていた。


「まったく…誰だ。こんなとこに死体を捨てたのは?」


毎日の日課になっている薬草を採りにと、戸を開けた途端に目に入ったのは、行き倒れている人。

巴は眉を潜めながら、うつ伏せに倒れている人へと近寄る。

めずらしい迷彩柄の装束があちこち破れ、そこから斬られたような傷が多数覗く。
一番酷い傷が脇腹にあり、そこからは大量の血が滲み出て迷彩の装束を赤黒く染めている。


「うわ〜、ざっくりやられているな。一体なににやられたのか…」

そう呟きながら巴は迷彩の死体を軽くつついてみた。


「うっ…………」

「あれ?まだ生きてる」

あれだけの大量の血が出ているのだからとっくに事切れてたと思ったのだが、まだ息があるようだ。


「やっかい事は嫌いなんだが…仕方ない」


巴はしぶしぶその迷彩の彼の腕を肩に担ぐと、引きずるように自分の家へと運んだ。







──────────…

「…ふぅ、これでよし」


巴は手を手ぬぐいで拭いながらため息と共に呟いた。



あの後、部屋へと運んだ迷彩の彼を布団へ寝かせ傷の具合を見る為、上の服を脱がした。
何やら色んな武器やら防具がついていて脱がすのに手間取ったが、なんとか上半身を裸にして傷を見る。

…やはり脇腹の傷が一番酷くかなり深い。
他の傷は大したことないが、これは全て刀や刃物でついた傷のようだ。

「本当に厄介なものを拾ってしまったな……」

巴はため息をつき、てきぱきと治療を行っていく。

一番酷い傷は縫合して治癒を高める薬を塗り込んだ湿布を貼り、傷口が開かないようさらしを巻いて固定する。
ほかの傷にも同じように湿布を貼ったり、傷薬を塗ったりして一通りの手当をすませた。


後は血が流れ過ぎて貧血を起こしているので、増血薬を飲ませないといけない。

巴は薬棚から何種類かの薬草や薬種を取り出し、薬研で挽いて薬を作る。
それを水で溶かし湯飲みに入れ替え彼の元へ戻る。


「おい、飲めるか?」


一応声をかけるが、返事はない。
仕方なく薬を口に含むと彼の口に口づけ、薬を流し込んだ。


「う、ぐぅ……」


意識はないが、流し込まれた薬に彼は眉間に皺を寄せ飲むのを拒否しする。
しかし根気よく流し込まれ、こくんと嚥下したのを確認して唇を離した。



「私に出来るのはここまでだ。あとはお主の生命力次第だな」


少し顔色が良くなった彼の夕日色の髪をくしゃりと撫で、巴は部屋を後にした。




 


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